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今年に入ってから吹奏楽曲を聴く機会がぐんと増えた。i-podにCD音源を収録できるようになり、気軽に外でも聴けるようになった事、昨年からブラスバンドブラス・アンサンブル吹奏楽のコンサートに行く機会に恵まれた事、吹奏楽人口の活性化に伴って、最近、様々なCDがリリースされている事がその背景にあるようだ。
小・中・高と、吹奏楽に親しんできた自分にとって、昨今吹奏楽が盛り上がっているのは嬉しいことだし、吹奏楽を通して得たものは計り知れない。楽器の演奏技術、アンサンブルを通じた協調性、メンバー同士の人間関係・・・そして、吹奏楽には、素晴らしいオリジナルのレパートリーがあまた存在する事を学んだのもその一つだった。
そんな中、近年あるアルバムに出会った事が、忘れかけていた記憶を呼び戻してくれた。

Band Classics Library」(頭文字を取って「BCL」と名打ったタイトルとなっている)。吹奏楽の人気レパートリーを一同に集め、最新録音で蘇らせたシリーズものの企画で、2003年の第一弾以来、現在まで7枚のディスクがリリースされている。そこには、自分自身、現役時代に演奏した曲、聴いた曲も多く収録されており、思わず、懐かしさが込みあげてくる。今回は、その第一弾ディスク(アルバムタイトル『春の猟犬』)に耳を傾けてみたい。収録曲は以下の通り。

①序曲「春の猟犬」(アルフレッド・リード)
②朝鮮民謡の主題による変奏曲(ジョン・バーンズ・チャンス)
③マナティリリック序曲(ロバート・シェルドン)
④シンフォニア・ノビリッシマ(ロバート・ジェイガー)
⑤ロマネスク(ジェームス・スウェアリンジェン)
⑥アパラチアン序曲(ジェームス・バーンズ)
⑦海の歌(レックス・ミッチェル)
⑧セイント・アンソニーヴァリエーション(ウィリアム・H・ヒル)

木村吉宏指揮 広島ウインドオーケストラ
(さくらぴあ大ホール、広島県にて収録、Brain Music国内盤)


①「春の猟犬」
中2の頃に聴きに行った母校の高校の吹奏楽部の定期演奏会(1989年 杉並公会堂)で、当時の先輩達が取り上げていた曲。アルフレッド・リード(1921- 2005)は、当時も今も人気の作曲家。吹奏楽の神様といってもいい程、吹奏楽界に偉大な功績を残してくれた。

②朝鮮民謡の主題による変奏曲
高校時代のトランペットの同期で、パートリーダーのT君がこの曲の一フレーズを練習していた時期があった。彼の出身中学のOB吹奏楽団で演奏する曲との事。その後、そのOB吹奏楽団の演奏会を聴いてこの曲を初めて通して聴いたのだった。有名な「アリラン」の旋律が次々に変奏される展開パターンが面白い。

④シンフォニア・ノビリッシマ
当時も今も人気の高い名曲。「ノビリッシマ」=「高貴な」という意味のごとく、中間部の旋律は感動的で、さながらホルストの「木星」の中間部を思わせる。分かりやすい構成も愛奏される理由だろう。高校卒業前の3月、後輩達が定期演奏会(1993年 杉並公会堂)で取り上げたレパートリーでもあった。

⑤ロマネスク
高2の定期演奏会(1992年3月 杉並公会堂)での演奏曲。この曲には思い出があって、当時、部員同士で定期演奏会のステージ曲を決める選曲部会なるものあった。その選曲部会で、自分が応募して多数決を得られた曲。スウェアリンジェンらしからぬ(?)実に美しい曲。タイトル通り、ロマネスク様式の建築美を思わせ、吹奏楽ならではの美しいハーモニーを実感できる。

⑥アパラチアン序曲
高2の文化祭(1991年9月 高校体育館)のオープニングで演奏した曲。中間部のトランペットソロは、自分がステージで初めてソロを吹いた。
今でも聴く度に、何となく緊張感が・・・(^^)それだけに思い出深い曲。後半部のコラール的な展開の美しさはバーンズならでは。

・・・演奏は吹奏楽界の重鎮、木村吉宏氏が音楽顧問として就任している広島ウインドオーケストラ(画像:下)を振ったもの。プロの吹奏楽団というと、老舗の東京佼成ウインドオーケストラ大阪市音楽団、最近では佐渡裕氏の下、快進撃を続けるシエナ・ウインド・オーケストラが思い浮かぶが、1993年に設立されたというまだ歴史の浅い吹奏楽団を起用した事が、今回の狙いにも合致しているように感じた。

木村氏自身、ライナーノーツで次のように語っている。
「これまで使用してきたスコアをあえて用いず、過去の演奏の記憶をたどりつつも、新しい目でスコアを見ることで、これらの曲がまさに“新曲”であると感じ、現在もなお脈々と息づいている事を発見しました」

この木村氏の試みには共感する。実際、新曲が初演されたかの如く、これらの定番レパートリーに新風を吹かせている。まだ歴史の浅い団体であるがゆえ、そこに様々な色彩を付けやすいし、指揮者の意志も反映させやすい点で功を奏しているようだ。
録音も、吹奏楽に強いレコード会社(BRAIN MUSIC)だけに、残響がたっぷりととられたホール収録で、吹奏楽ならではのふわっとした柔らかなサウンドが手にとって感じられるよう。まさにWind(=風)なOrchestra演奏なのだ。

今回、これらの吹奏楽曲が、自分にとっては昔の思い出を懐かしむだけではなく、今聴いてもなお新鮮な名曲ばかりである事を改めて気づかされた。このシリーズ企画に、吹奏楽愛好者の一人として感謝したい。


【こだクラ関連ブログ/木村吉宏&広島ウインドオーケストラ】

吹奏楽の人気レパートリーが大集合!その2~木村吉宏&広島ウインドオーケストラの好企画


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