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6年ぶりに山下達郎の待望のニューアルバムがリリースされた。アルバムタイトルは「Ray Of Hope」。収録曲「希望という名の光」の英題だが、今回、アルバムタイトルとしてフィーチャーされたのは、大震災後のリリースとなった事もあり、復興祈願を込めた意味合いが大きいようだ。全体的にはポジティブな曲の割合が多いのも特徴で、選曲にも工夫が凝らされている。また、オープニングとエンディングに「希望という名の光」のアカペラコーラスが各々別ヴァージョンで収録されている事も、アルバムコンセプトを形付けているといえるだろう。

収録曲は以下の通り。

①希望という名の光 (Prelude)
②NEVER GROW OLD
③希望という名の光
④街物語 (NEW REMIX)
⑤プロポーズ
⑥僕らの夏の夢
⑦俺の空
⑧ずっと一緒さ
⑨HAPPY GATHERING DAY
⑩いのちの最後のひとしずく
⑪MY MORNING PRAYER
⑫愛してるって言えなくたって (NEW REMIX)
⑬バラ色の人生~ラヴィアンローズ
⑭希望という名の光 (Postlude)

初回限定盤付属ライブディスク「JOY 1.5」収録曲
①素敵な午後は(1985/2/24 神奈川県民ホール)
②THE THEME FROM BIG WAVE(1985/2/24 神奈川県民ホール)
③ONLY WITH YOU(1986/10/9 郡山市民文化センター)
④二人の夏(1994/5/2 中野サンプラザ)
⑤こぬか雨(1994/5/2 中野サンプラザ)
⑥砂の女(1994/5/2 中野サンプラザ)
⑦アトムの子(1992/3/15 中野サンプラザ)


この内、「希望という名の光」、「僕らの夏の夢」、「ずっと一緒さ」、「HAPPY GATHERING DAY」、「愛してるって言えなくたって」、「バラ色の人生~ラヴィアンローズ」は、本ブログで以前エントリーしているので、ここではアルバム初収録曲について感想メモを残しておきたい。

NEVER GROW OLD」は2010年の三ツ矢サイダーのCMソング。過去、1976年に三ツ矢サイダーのCMをアカペラで手がけていた事もあり、約35年という時代の変遷の中での達郎の進化が感じ取れる。サイダーならではの爽快感は前作と共に前面に出ており、タイアップ曲としての完成度も高い。
プロポーズ」は、歌詞からいくと明らかに「いつも一緒さ」的なバラードをイメージしていたが、ここではポップス調で意外とあっさりとまとめられている。現代の男女のカジュアルな生き方の表れでもあるのだろうか。
一方、「俺の空」は、今回のアルバムコンセプトからすると、やや異色な選曲に感じたが、達郎流の現代風刺とも取れる曲。「いのちの最後のひとしずく」は、作家的な香りが漂う作品。「MY MORNING PRAYER」は日本テレビ系の朝のワイドショー番組「ZIP!」のタイアップ曲。これまでも「ヘロン」や「モーニング・シャイン」等、朝にふさわしい曲や朝のタイトル名が付いた曲はあったが、この曲もそんなカテゴリーに属する作品。ライナーノーツによれば、大震災の当日はこの曲のレコーディング中だったというが、それだけに、「祈り」=「PRAYER」という言葉が心に響いてくる。アルバム初収録曲の中では、「NEVER GROW OLD」と共に、お気に入りとなった。

なお、初回特典盤として、過去のライヴ音源が「JOY1.5」として収録されている。時節柄か、夏向きの曲が数多く収録されているのも嬉しい。1985~1994年にかけて、達郎自身の30代前半~40代前半の活躍していた頃の音源で、過去のライヴがこの1枚でダイジェストに堪能できるといえるだろう。最後の収録曲が「アトムの子」となっているのも復興へのエールとして聴こえてくる。スタジオ音源も山下達郎ならではのこだわりを感じさせるが、山下達郎の音楽としてのグル―ヴを感じるのはやはりライヴ音源。ライヴで真骨頂を発揮できるアーティストこそ、本物の音楽家だと思う。

なお、今月発売の「サウンド&レコーディング・マガジン」には山下達郎の貴重なインタビューが掲載されており、ファン必見。PA関連の専門誌だけあって、普段あまり語られることのないレコーディングの機材や、作曲法等について詳細に語られている。現状に満足することのない、飽くなきチャレンジャーとしての一面が垣間見える。

自分にとってこの夏のヘビーローテーションになるのは間違いなさそうだ。