さて、再びのダブロンでどん底に落ちたママだったが、一番場慣れしてるだけに、少しずつだが盛り返し始めていた。
トップこそないものの、裏が乗りだし、傷を最小限に食い止められているのだ。
そして午前3時。ここでオーラスを迎えた半荘で、ようやくママの復活となるのだった。

小菅の起家で始まったこの半荘は、親落ち直後からのオッサンの猛攻で、ラス前まで俺とママの二人沈みだった。そこからママの反転攻勢となる倍直で、点差を3万ちょうどにしている。
で、オーラス。
俺は19000点しかないので、トリプル以外に勝てる目はない。半ば諦め気味に手を進めていた。
一方、小菅はアガればトップ。軽い手が入っている雰囲気でもあり、要警戒だ。
ラス親のママはというと、6巡目で中張牌が全く出ていない。遅いのか、手がいいのか…。
かく言う俺の手は、
①③⑨⑨2299東東東發發
七対子の一向聴だが、立場的に狙えるのは四暗刻のみ。そのタネも二人に切られて、戦意を喪失している。
と、ママからリーチ。
九西91中①2⑦←リーチ
ここで小菅が固まる。
「…あちゃ~、通せる牌が無いで」
十数秒間悩み、打ち出されたのは、無筋の7。
「よ~し、出た出た、ロ~ン!」
ママの手は、
②②②⑧⑧45566678 7←ロン
「よしよし、裏が乗ってくれてるやん、3つも」
裏表示牌は①で、リーチ即タンヤオドラ5の倍満。
「…こんなん、何が通るかわかるかァ!」
言って開けられた小菅の手牌は、
③④⑤⑥⑥44557888
…確かに危ない牌しかなかった。
聞けば、入り目は⑤だとか。
5と8は暗刻スジ。③と⑥はドラスジ。そのソバの⑤も赤ドラだし、4と7もカベの内側。
となれば安全そうなのは④だが、本人がヒッカケを多用するので、警戒したようだ。
で、結論は、暗刻スジの横である7。俺の頭では、これは同情に値する放銃に思えた。
ただ、この次の半荘で、小菅はラス半コール。疲れで生じた失敗だと思ったらしい。
俺が1万弱、小菅がほぼチャラでお開きとなった。

帰り際、平さんが、
「またたまに顔を出してくれよ」
と、手を振ってくれた。家から遠いので、スロットのイベントでもないと来ないが、それでも懇意にしようと思った。
午前1時。看板をしまい、シャッターを閉め、暗幕を引き、完全にナイトモードに入った店内。
その間も、俺たち3人の闘牌は続いていた。

この半荘は、やはり不調を引きずったママの完敗ペース。オーラスまでこぎつけたが、残り8千点。一方、俺とオッサンの差は17本。ママがラス親なので、ハネツモでも変わらない。
そんな折、オッサンが額を叩いた。
「…あちゃ~、忙しい時にかぶるな!」
前の巡目で生牌の中を切ってすぐもう1枚の中。焦るわな、オーラスだとあせる
しかし、先にテンパったのは俺。
②④④④⑤⑧⑧⑧123567
捨て順は
九西白一9①
迷う事なく②切りリーチ!
…すると、次巡には小菅のオッサンもリーチ。
一⑨①中中3西九←リーチ
珍しく、俺の安全牌を抱えていたみたいだ。
山越しになる②を引いた時は冷や汗モノだったが、なんとかセーフにひひにひひにひひ
次の巡目、小菅から声が。
「カンッ!」
公開されたのはダブ南。満貫以上確定だ。打⑧。
「…う~ん、親やし、ここは勝負なんかなァ?」
弱気のママが、それでも牌を横に向けた。打⑤。
「「ロン」」
「…ま、またァ?ショック!」
再びダブロン。俺の手はリーチ3丁の満貫。小菅はと言うと…?
⑤⑥⑥⑥234789■南南■←アンカン
…リーチダブ南ドラ2、満貫だ。
どっちみちママのドボンは確定で、飛ばしは小菅。俺はトップだけもらえればいいやグッド!
…と思ってたら。
「悪いな、ママ。モロ乗りや」
ウラドラ表示牌が共に東!
つまり裏8!!
てコトはトリプル?!
…ンなコトあるんかァ?
「…お? 逆転やなチョキ」
言われたように、千点差でまくり切られてしまったのだ。
腰砕けになる俺と、天を仰ぐママ。相当なショックを受けた二人を尻目に、オッサンは嬉しそうに券を数えている。
国士の瞬間消滅の局は、ママの軽い手(2000通し)で終わった。
そこからは、小菅のハネツモ、ママの満貫ロン(小菅から)、小菅の倍ツモ。東場の俺はノーホーラで終わった。
続く南入り。俺にようやく早そうな手が入る。
②③④④⑤⑥⑧456西西北 ドラ西
③⑥⑦⑧⑨か西か北かが入ればテンパイだ。筒子に絡むと、北を出すのでダブリーではなくなるが、リーチドラ5は大きい。特に⑦引きなら、問答無用の3面張だチョキチョキチョキ
初巡、東引き。北を出してイーシャンテンも悪くはないが、持ち点17本では親にポンされた時に心許ない感じだ。ツモ切り。
3巡目に小菅が北出し。それに合わせて北を出すと、続けてリンシャンから2枚の北。
「待っとけか~むかっむかっむかっ」
小菅が天井を向いて額を叩く。
別に予感があったワケではないが、往々にしてこういう事態は発生する。逆パターン(先出しされて北が重ねられる)もしかり。
ただ、引いたのは⑨。元ツモは8だから、ペン⑦待ちになってしまう。場にはすでに2枚切れ。さすがにためらわれるので、8へのくっつきを期待して⑧切り。
するとママから西が出た。
「ポン」
②③④④⑤⑥⑨4568
西西西←ポン
⑨を比較的安全な所だと見て、打8。
「…う~ん、西ドラ6かァあせるあせるあせる」
ママが困り顔になる。
表ハネマン、実質倍満以上の手に、親とはいえ勝負に行けるかどうか。
ただ、小菅は恐れない。
「金持ち喧嘩するで!!」
⑥切りリーチ。強引に突っ込んできた。
白九中②⑧⑤⑥←リーチ
明らかな索子の染め手だが、このオッサンの場合はモロ引っ掛けが多い。
ツモは③。普通なら⑨切りだが、ここは敢えて⑥の現物落とし。
「小菅ちゃん、スジはイヤよ」
ママが切ったのは⑨。
「「ロン!」」
「…え、ドンドン?ショック!」
小菅:⑨⑨11177799發發發 ロン⑨ ウラ一
俺:②③③④④⑤⑨456
ロン⑨ 西西西←ポン
ママは二人に倍満を振り込み、きっちり0点でドボンになってしまう。
「…こんなんキツすぎるわ~」
ママの悲嘆に、平さんは後ろから、
「小菅ちゃんのクセは知っとるやろうに。工藤ちゃんかて止めとるがな」
要らん解説を入れてくれるのだ。
…フォローになってないってあせるあせるあせる