いままで、母の食事用車椅子を作ってきたが、これはダイニングテーブルに腰かけるものだった。このたびは、ちょっと違ったものを作る。母が畳に座るための道具である。つまり椅子に腰かけて食事する場合もあれば、昔ながらに畳に座って食事する場合もあるということである。
母は、脚力がほとんどないうえに、膝が90度以上曲がらない。だから普通の人のやる「しゃがむ」という動作ができない。膝の曲がらない人が、立った姿勢から畳に座る場合、まず四つ這いになり、次に、体を回してお尻を横方向に「ドーン」と落とす。つまり滑らかに降ろすことができないのである。このドーンという衝撃が、体に負荷をかけるのは明らかなので、どうにかして、この問題を解決したいと思っていた。
母が相撲のまわしをつけていれば、僕がそれをもって、お尻をゆっくり床に降ろすという動作ができるのに・・・。まわしでなくても、それに似たようなもので、岩登りとか、災害救助とかのときにつかう「ハーネス」というものがある。要するにこれに似たものを簡単に作れればいいのだが・・・。
・・・とつらつら考えている間に、だんだん考えがまとまってきた。なんのことはない。丈夫な布を用意して、それを、お尻を包みこむように、下からあてがえばよいのである。介助用具としては、かなりスッキリしてしまい、もはや単なる布であり、「まわし」という命名は、適切でないように思えてくるが、他に、この布を言い表す適当な呼び名がないので、ここではそのように呼ぶことにした。
下の写真は、帆布を使って実験してみたもの。
1)布をつかんで、お尻に当てる。
2)以下、布に乗せたお尻をゆっくり床へ降ろす。
というわけで、布一枚でできることがわかった。あとは使いやすいように、縁をかがったり、取っ手を付けたりする。
なお、おそらくこういうものはプロの介護の現場ではあまり一般的ではなさそうな気がする。なぜかというと、介助者にある程度の腕力が要求されるし、下手をすると腰を痛める可能性もある。
実を言うと、僕は腰痛持ちである。いままで何度もぎっくり腰をやってきた。ただ、個人的な経験を言わせていただくと、僕の腰痛は、なんにも力を入れていない、全く予想できないときに、「ギク!!」っとくる、いわゆる「魔女の一撃」である。荷物を持ち上げようとして体に力がみなぎっているときに、こうなることはほとんどない。これが経験上わかっているから、重い物や人を持ち上げるのはあまり怖くないのである。
とは言え、上記したように、これが万人に当てはまるとは限らない。あくまでも僕が、自分の筋力の範囲で使う道具である。





