手ぶloveの「諸行無常のソナタ」 -3ページ目

手ぶloveの「諸行無常のソナタ」

アル中地獄からの解脱と共に解き放たれた世界。
色即是空のことばたちが
縦横無尽に駆け巡る。哀愁の人間讃歌。手ぶらワールドへ
ようこそ!

父もいない


母もいない


ボクは爺ちゃんに育てられた。



「路上の別伝説」

作.手ぶlove




「おい、ハルオ。ズボン縫っといたで。

あんまり破るんでねぇぞ…」





ボクの学生服はボロボロだ。

中1の頃から着ていて、裾も袖も短い。

中3になったボクは背も伸びて

身体も大きくなった。


上着のボタンを止めるとぎっちぎちで

今にも張り裂けそうだ。


おまけに継ぎはぎだらけで肩や肘や膝には

破れ防止に雑巾があてがわれ、縫い付けてある。


今ちょうど、爺ちゃんが

穴の空いた膝を新しい雑巾で繕ってくれたところだ。


そんなボロボロの身なりは、いつからか

奇異の目で見られるようになって行った。

ボクは同級生から

“ミイラ男”と噂され

避けられるようになった。



それからというもの、学校では

クラスメイトからさえも、話しかけられなくなった。


ハルオと呼ぶのは

爺ちゃんと学校の先生くらいで、

同級生は、ボクのことを陰で皆、

「ファラオ」と呼んでいるようだ。




そんなに気味が悪いのだろうか…


けれど


父さんも


母さんも


いなくなるのだから。


やっぱり、よほど薄気味悪いのだろう。



ボクはほとんど自虐的に心の中でシャウトした。




「ゴッド.セーブ.ザ.ファラオ!!ハッ!ハ!」











知らない間に

ボクの噂は隣街にまで及んでいた。


いつしか「裏番長のファラオ」と呼ばれて

近隣の学校にその名を轟かせて行った。





何がファラオだ。

苔上砂雲(ノルウィージャン)中学校3年生14才
ボクの名前は与面家遥夫(よもやはるお)

ちゃんとハルオって名前がある。

ファラオじゃあない。

バケモノなんかじゃないんだ…
人間なんだ!!

つづく
produced.by.tebura.studio.jp






楽曲「thai-nana」kazero