O先生は、きっと混乱していて 

自分でも 収拾がつかなくなってるんだろうなと思いました。




職人気質で 頑なな性格の先生には、想定外の展開だったのでしょう。



先生は、やっぱり典型的内科系ドクターらしく、凄く真面目で融通が利かない所もあれば、やたらと相手の裏を読もうとする所もあります。




珍しく感情を露わにするところもあります。


しかし、今回はたった一行「辞退します」の文字だけでした。

行間にも 本当の理由を読むことはできませんでした。 


暮れも迫った12月の後半のある日。私は、S会の本院を訪ねました。

先方は、専務理事と 同じ大学出身の同期のF先生です。

「O先生は、初転職で混乱されています。辞退でなく保留にして頂けませんか?」とお願いしました。




ポジションは1名分しか空いていませんでした。



専務理事からは「わかりました。ぜひO先生にお越し頂きたいので、出来るだけ条件はご希望に沿うようにします。」と仰って頂きました。


F先生からは「うろ覚えけど、あんまり喋らない友達少ない人だよね?ドクターとしては知らないけど、うちの病院は、コミュニケーションスキルが無い人には合わないと思う。絶対 反対!」

 外科系らしく、バッサリと一言で F先生には、切り捨てられました。





専務理事と私、二人がかりでF先生に「O先生は真面目な良い人だから」と説得し、なんとか「そんなに言うんだったら、僕にできる事なら協力しますよ。」と仰って下さいました。




O先生が帰省するかもしれないお正月に、

F先生が 実家に「先生と一緒に仕事できるって聞いたから楽しみにしてたのに来ないんですか?」と電話して頂くのも 全員で考えましたが、

透析クリニックは年中無休です。



確実にO先生が帰省するとは限りません。

個人情報の取り扱いにも慎重なO先生の 携帯電話番号やメールアドレスを お知らせするわけにも行きません。



先生の心のシャッターは、完全に閉じてしまっています。


どうやって、もう一度シャッターを開けて頂くか?

間隔を置いて送信したメールも 読んでいる気配がありません。


辞退したけれど、ずっとどうしようか考えているに違いない。

そう確信はしていました。




しかし、同じ方法でアプローチしても、ダメなのは明らかでした。



メールさえ開封していないのに、電話までしたら きっと着信拒否されてしまいます。



 は、サポートさせて頂いている先生方には、必ず年賀状やバースデイカードを書いています。きっと年賀状なら、見てはくれるはずです。


一か八か 年賀状に一行だけコメントを書きました。

「S会様は、先生のご希望になるべく合わせますと仰って下さっています。」


それでも、ずっと返事は来ないままでした。