リムスキー=コルサコフ(Nikolai Rimsky-Korsakov/1844-1908)
国民楽派に分類されるロシアの作曲家です。
《シェヘラザード》は4つの楽章で構成される交響組曲です。
そもそもシェヘラザードとは何かと言えば、『千夜一夜物語』(アラビアン・ナイト)の語り部をつとめる女性の名です。
🔵『千夜一夜物語』の構成
ササン朝のシャーリアル王は妻の不貞を知り、女性不信に陥る。
以来、女を呼び寄せて一晩ともに過ごした翌朝、その女の首をはねる、という蛮行を繰り返すようになる。
そんな中、大臣の娘・シェヘラザードが自ら進んで王の相手に名乗り出る。
シェヘラザードは非常に巧みな話術で王に面白い話を聞かせ、ちょうど良いところで「続きはあ・し・た」と切り上げてしまう。
話の続きが聞きたい王はシェヘラザードを生かし続けることが千夜にも及び、とうとう王は蛮行を改めた。
『千夜一夜物語』は読んだことがない。
ディズニーで有名な「アラジン」はアラビアン・ナイトのイメージですが、本来は収録されていなかった話らしい。
しかも原作の「アラジン」の舞台は中国だという。
ディズニーの「アラジン」の歌詞は思い切り「アレイビアンナ~イト」って歌っていますよね。
それはともかく、シャーリアル王を惹きつける面白い話の数々を音楽で表現したリムスキー=コルサコフ。
第1楽章:海とシンドバッドの船
いきなり出ました、シンドバッド。最初はシャーリアル王を表す威圧的・高圧的な音楽で始まります。その後、シェヘラザードのテーマがヴァイオリンの独奏で美しく演奏されます。シャーリアル王の音楽をモチーフ(海のモチーフ)に転用してシンドバッドの冒険が描かれます。
第2楽章:カランダール王子の物語
個人的に最も好きな楽章。シェヘラザードのテーマから入り、ファゴットが魅惑的な旋律を吹くと、オーボエに受け継がれ、次第に高揚していきます。途中、威圧的な音楽に分断されたあと、リズミカルな音楽に変化したりしながら進んでいく。
第3楽章:若い王子と王女
美しい緩徐楽章。ロマンティックな曲で好きな人も多いはず。
第4楽章:バグダッドの祭り、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲
シャーリアル王のテーマが勢いよく鳴る。シャーリアル王のテーマの変奏=海のモチーフが勢いよく展開していき、最後は柔和になったシャーリアル王のテーマとシェヘラザードのテーマが溶け合いながら曲は結ばれる。
物語を題材とした管弦楽曲では、R.シュトラウスの《ドン・キホーテ》と双璧を為す傑作だと思います。
前に書いたつもりだった《シェヘラザード》
過去の記事を見回していて、書いていないことに気がつきました
最近、大河ドラマ『光る君へ』でこの音楽を模したBGMが流れるのに引きずられて新しくCDを2枚買ったのです。
それが非常に良かったので「よし、《シェヘラザード》その2を書こう」と思ったら、そもそも1がなくてビックリした。笑
従って、最近買ったCDではなく、もともとのお気に入りだった名演をご紹介。
1枚目に紹介する演奏はこれ。
ヴラジーミル・フェドセーエフ指揮 モスクワ放送交響楽団
木野雅之(ヴァイオリン)
録音:1994年(CANYON)
●第1楽章:09'51
●第2楽章:13'28
●第3楽章:09'10
●第4楽章:11’42
シェヘラザードのモチーフを弾くヴァイオリンの独奏は、コンサートマスターが兼ねることもあればソリストを招くこともあるのですが、この演奏では木野雅之を招いています。
この人はソリストとして活躍しつつ、日フィルのコンサートマスターでもあります。
第1楽章、威圧的なシャーリアル王のテーマですが、重厚で音楽的な良い響き。その後の木管の和音が5回鳴るところ、あまり長く音を伸ばしませんが、これが良い。その後、木野雅之のソロが艶やかに美しく響きます。ここまでで完全に魅了される感じ。シンドバッドの冒険も、無理のない音楽運び。オーケストラのサウンドが抜群に良い。
第2楽章、ソロヴァイオリンのあと、ファゴットの素晴らしいソロ。それを受け継ぐオーボエの滑らかなソロ。そして速くはないのですが、スピード感のある弦楽合奏へ。この流れも最高。その後の木管アンサンブルも非常に良いサウンド。途中で威圧的な音楽で分断されたあと、クラリネットのソロも見事。とにかくフェドセーエフの音楽運びが完璧。
第3楽章のロマンティックな弦楽合奏も、第4楽章の刻々と鮮やかに表情を変える音楽も見事。
フェドセーエフの音楽運びが終始素晴らしい。ひとつも無理がなく、それでいてドラマティックで物語が見えるようでもある。
全体的にティンパニが悪目立ちせず、重厚感のある音でオーケストラのサウンドに溶け込んで音楽を作っているのが凄く良い。
超名演です