ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven/1770-1827)
古典派ドイツおじさんです。
年末になると第九のブログを書くのが習慣となっております。
昨年はジュリーニでしたが、今回はまた古楽器に戻りまして、こちらの演奏。
ロジャー・ノリントン指揮 ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
録音:1987年(EMI)
イヴォンヌ・ケニー(S)
サラ・ウォーカー(Ms)
パトリック・パワー(T)
ペッテーリ・サロマー(B)
ロンドン・シュッツ合唱団
●第1楽章:14'11
●第2楽章:14'20
●第3楽章:11'09
●第4楽章:22'43
この演奏を初めて聞いたときは大きな衝撃を受けました。
古楽器オケによる第九を聴いた最初の演奏だったこともあり、それまで聴き慣れていたモダンオケの演奏とあまりにかけ離れた演奏だったので。
古楽器の演奏では先にガーディナー盤を取り上げましたが、実はノリントン盤の方が好きだし愛着があります。
【第1楽章】
古楽器らしい演奏。余計なアゴーギクはなく、ひたすら突き進んでいく。当然モダンオケのようなドラマティックさはないけれど、スッキリと直線的に進行していきます。
【第2楽章】
テンポは早すぎず遅すぎず、歯切れ良く小気味よく進行して理想的。野性的なティンパニの存在感。木管のアンサンブルはなぜかあまり存在感がない。ファゴットの主張が弱いせいかも。
【第3楽章】
最速記録を更新。アダージョとは?(笑)
【第4楽章】
初めて聞いたときに度肝を抜かれた(゚Д゚)のはこの4楽章。1~3楽章のテーマを否定していくバスの、あまりにアッサリした進行に耳を疑いました。インテンポでサクサクサクサク進んでいく様子は、モダンオケしか聴いたことがなかった自分には衝撃でした。パラダイム・シフトと言っても過言ではないくらいのショックでした。(過言)
歌に入ってもコンセプトは受け継ぎ、なるべくアッサリ進んでいきます。といっても限度があるので楽器で演奏するようには歌えませんので、少しは粘ります。変奏して行進曲になった所、意表を突いてめちゃくちゃ遅いテンポに落ちます。テノールは強い声質なのでその個性が活きているテンポのように思います。ゆっくりしたテンポのまま歓喜主題の大合唱に入るので、アッサリとこの楽章が始まったことによる予想が外れて感動的。
そして再び驚かされるフィナーレ。こんなにももったいつけずにサッパリと終わっていく第九があって良いものか。(良い)
感動的かと言われたら、間違いなく感動的ではないけれど、この曲のひとつのあり方として非常に存在感のある意義深い演奏だと思います。
《第九》5---《第九》7