ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813-1901)
イタリアのおじさんで、ロマン派に分類されており、イタリア・オペラ界の巨星です。
《仮面舞踏会》というと、浅田真央ちゃんが競技に使用していたハチャトゥリアンの方を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、今回はヴェルディの作品です。
ヴェルディの作品群を次期で分けると、ちょうど中期~後期の中間くらいに位置するのでしょうか?
原作の戯曲はフランスの作家スクリーブが書いたもので、原題は《グスタフ3世または仮面舞踏会》というものです。
この作品は本来スウェーデン国王グスタフ3世の暗殺事件を題材としたものでした。
ヴェルディもそれに沿って作曲していたのですが、政治的な理由からそのままでは上演できないことになりました。
そこで取られた措置は設定の改変。
以下に、変更点をまとめます。
●場所
スウェーデン → ボストン
●人物
グスタフ3世 → ボストン総督リッカルド
※アメリカはイギリスの植民地時代
アンカーストレーム伯爵 → 総督の秘書レナート
ホーン伯爵 → トム
リビング伯爵 → サムエル
●凶器
ピストル → ナイフ
★主な登場人物
ボストン総督。レナートの妻アメリアと不倫。
レナート(Br)
リッカルドの秘書にして親友。不倫の事実を知り、リッカルドの暗殺を決意。
アメリア(S)
レナートの妻でありながらリッカルドと不倫関係にある。
オスカル(S)
リッカルドの小間使い。
ウルリカ(Ms)
占い師。リッカルドがレナートに殺されることを予言する。
★主な聴きどころ
①恍惚とした喜びの中で:リッカルド
②希望と喜びに満ちて:レナート
③輝く星をごらんなさい:オスカル
④ウルリカの住まいを訪ねましょう:リッカルド,レナート,オスカル他
⑤地獄の王よ:ウルリカ
⑥言ってくれ、大波が忠実に私を待っているかどうか:リッカルド
〓第2幕〓
⑦あの草を摘み取って:アメリア
⑧この胸はときめき:アメリア,リッカルド
〓第3幕〓
⑨私の最後の願い:アメリア
⑩お前こそ心を汚すもの:レナート
⑪永久に君を失えば:リッカルド
⑫どんな衣装か見たいだろう:オスカル
⑬彼女は純潔だ:リッカルド
聴き所満載ですよね。
独立したアリア以外にも、全編を通して華やかな歌に満ちあふれた傑作オペラなのです。
あらすじについてはこちらを参照してください。
これだけ聴き所の多いオペラですから、すべての歌手を高いレベルで揃えるのは難しいと思いますが、個人的にリッカルド(T)レナート(Br)オスカル(S)の3役を特に重視しています。
登場人物紹介でも明らかなように、ストーリー上、女声陣で最も重要なのはアメリアですが、このオスカルという役のチャーミングさは格別。
アメリア以上に目を引くキャラクターです。
さて、ファーストチョイスは、その主要なキャラクターがすべて完璧に揃ったこの演奏です。
エーリッヒ・ラインスドルフ指揮 RCAイタリアオペラ管弦楽団
録音:1966年(RCA)
リッカルド:カルロ・ベルゴンツィ(T)
レナート:ロバート・メリル(Br)
アメリア:レオンティン・プライス(S)
オスカル:レリ・グリスト(S)
ウルリカ:シャーリー・ヴァーレット(Ms)
メリルというバリトン歌手が大好きでして、このCDもメリルが歌っているから買った次第です。しかもこのオペラにはバリトンの名アリアとして名高い「お前こそ心を汚すもの」があるので嫌でも期待は高まりますが、期待通り、相変わらず深みのある美声が素晴らしくうっとりします。
「お前こそ心を汚すもの」R・メリル
ベルゴンツィも絶好調。伸びのある軽やかな美声で存分にカンタービレしており素敵。
プライスは相変わらずの粘り気。ドラマティックな歌唱力は文句なしですが、個性が強いので好みは分かれると思います。
あとはオスカルを歌うグリスト。これがビックリするほどチャーミング!本当にカワイイ小間使いちゃんです。
「どんな衣装か見たいだろう」R・グリスト
ラインスドルフの指揮は適度に存在感もあるし、手堅くまとめていて好感が持てます。ちなみに、RCAイタリアオペラ管弦楽団は覆面オーケストラで、実態はローマ歌劇場管弦楽団だったのだろう、と言われています。どうりでこなれた演奏なわけですね。
何はともあれ、素晴らしき名曲、素晴らしき名盤です。
ラインスドルフはこういう素晴らしい仕事をちょいちょい残している印象で、侮れません。
《仮面舞踏会》2