新倉瞳さんを知ったのは数年前。
横浜のタワレコでクラシックのCD売り場をウロチョロしつつ物色していた時のこと。
エルガーの棚に目立つように置いてあったCDのジャケットには左手でチェロのネックを掴んだ綺麗な女性の写真。
気づいたら買ってたよね
そのCDについてもいつか書こうと思っているのですが、今回はそんな新倉瞳さまの新譜のご紹介。
【魂柱と鞴】
新倉瞳(Vc)・佐藤芳明(Acod)
録音:2019年(蛇腹屋)
①~④チェロソナタ第5番/ヴィヴァルディ
⑤わが魂は主をあがめ/バッハ
⑥主イエス・キリストよ、われは汝に呼ばわる/バッハ
⑦タンティ・アンニ・プリマ/ピアソラ
⑧リベルタンゴ/ピアソラ
⑨マルゴーのワルツ/ガリアーノ
⑩コロメイカ/民謡
⑪スコチネ/民謡 ~ コイレン/ホランダー
⑫人生のメリーゴーランド/久石譲
チェロとアコーディオンのデュオによるアルバムです。
魂柱(こんちゅう)とはチェロのことです。ヴァイオリン族の楽器のパーツ名だそうで、表板と裏板をつなぐ柱とのこと。
「魂柱、英語では Sound-Post といいます、イタリア語では Anima つまり魂、心、生命という意味です。日本語でも 魂の柱 、本当によく言い当てたものです。楽器の中心に位置しその音色に大きく影響する重要な役割。まさに楽器の 心臓とも言えるのではないでしょうか・・・」
鞴(ふいご)はアコーディオンのことです。空気を送り込む装置のことを「ふいご」というのですが、アコーディオンの象徴とも言える蛇腹を言い表したものですね。
アルバムの構成ですが、前半はクラシック(厳密に言えばバロック音楽)でしっとりした音楽、ピアソラからの後半で雰囲気が一変します。
瞳さまはもともとクラシック畑のお方なので、ヴィヴァルディやバッハといったところはお手の物でしょう。
ところが、こちとらバロック音楽には疎いもんで。笑
(*`▽´*)
ベートーヴェン以降の音楽が好きで、モーツァルトすらほとんど聴かないという。
とはいえ、バロック~古典派が嫌いなわけでは勿論なく。
こうして聴いてみると、あまり飾り気のないシンプルな音楽は奏者の音楽性というか心がダイレクトに伝わってくるようで良いものですね。
しかし、ラルゴ→アレグロ→ラルゴ→アレグロ、という構成ってヴィヴァルディの時代には一般的だったんでしょうか?
アレグロ→アンダンテ→アレグロとか、ヴィヴァーチェ→ラルゴ→アレグロ、とか、速い両端楽章に緩徐楽章が挟まれているのがソナタの基本だと勝手に思い込んでいました💦
なんだか2楽章も4楽章も両方フィナーレっぽいなと感じてしまう。笑
しかも全楽章が短調というのも意外でした。
そもそもソナタって3楽章形式が基本で、後年に型破りの4楽章以上のものが出てくるのかと思っていたのですが、ヴィヴァルディがすでに4楽章で書いているんですね。
バッハは完全に教会音楽という感じのタイトルですが、ヴィヴァルディからバッハまですべて短調。
どの曲も瞳さまの深い音色にアコーディオンの音がよく合っています。
アコーディオンの音がなぜバロック音楽に合うのかといえば、おそらくオルガンの響きに似た部分があるからでしょう。
Wikipediaより
空気を送り込むことで音を出す鍵盤楽器、という点でアコーディオンとオルガンは共通しており、特に足踏み式のオルガンの音とアコーディオンの音は近いように思います。
もっとも、バロック時代は教会が大オルガンを競って建造し始めた時期とのことですが。
それはそれとして、このアルバムはピアソラから先が特に素晴らしいと思うのです
∑ヾ( ̄0 ̄; )ノ
⑧リベルタンゴ
まず、伸びやかな旋律に魂をこめる瞳さまの素晴らしいチェロ
こういうのを聴くと弦楽器って良いなあ、と思います。
前半はバッキングに徹している鞴さまですが、そもそもピアソラといえばバンドネオンなわけで、アコーディオンの音色は完全にピアソラにマッチします。
瞳さまからソロを交代した鞴さまのアドリブ的なソロもめっちゃ素敵で、瞳さまの野性的な三連符のバッキングに乗って素晴らしいソロを展開します。
延々リピで聴いていられる
⑨マルゴーのワルツ
しっとりと、でも情熱的に始まります。
その後、瞳さまと鞴さまがユニゾンで速いパッセージを繰り返すターンはスリリング。
⑩コロメイカ
トラディショナルとのことですが、どこの国の音楽なのか分かりません。
ロシアのコサックダンスっぽい雰囲気があります。
短い曲ですが、リズミカルな音楽で変化にも富んでおり魅力的です。
途中、瞳さまがジプシー・ヴァイオリンのチェロ版みたいな音(伝わるかしら?)を奏でる所があったり。
とても面白い曲です。
⑪スコチネ~コイレン
2曲を繋いだメドレー的なトラックです。
スコチネは前曲と同じくトラディショナルだそうですが、やはりどこの国の曲やら分かりません。
前曲よりも落ち着いたテンポの曲ですが、やはり踊りの曲のような感じです。
コイレンはナスキー・ホランダーという人の曲らしいです。
こちらはテンポもあがり、非常に情熱的な楽曲です。
これもトラディショナルだと言われれば信じてしまいそうな雰囲気を持った曲です。
⑫人生のメリーゴーランド
これはジブリ映画『ハウルの動く城』の音楽だそうで。
ジブリはほとんど見たことがなく、『ハウル~』も見たことがありません。
タイトルからも想像できますが、ワルツの曲です。
アンコールの位置づけに感じられます。
初めて聴きましたが良い曲ですね。
『リベルタンゴ』から激しめの曲が多かったのですが、落ち着いた癒やしの曲です。
この曲はサックスアンサンブルで演奏してみたいなと思いました。
とにかく
ヴィヴァルディに始まり久石譲に終わる、一見破天荒にも見える構成ですが、聴いてみるとひとつのコンサートのようです。
6曲目と7曲目の間には少し休憩が入り、衣装チェンジがあって、というようなステージの風景が目に浮かぶようです。
素晴らしく充実した気分にさせてくれる1枚です
お買い求めはタワレコやHMVでお早めに
*最初、近所のTSUTAYAで取り寄せを頼もうとしたら取り扱っていませんでした。
ちなみに、僕はタワレコで買いましたが、店頭取り寄せよりもタワレコオンラインで買った方が到着が圧倒的に早いです。
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