1 事務所の理念  

 私が代表を務める弁護士法人兼六法律事務所は,「法的サービスの提供を通じて社会を幸福にします」という理念を掲げています。

 そして,これを分解し,(1) 依頼者を幸福にします,(2) 相手方を幸福にします,(3) 様々な公益活動を通して社会全体を幸福にします,と説明しています。

 

2 相手方の幸福

 依頼者の幸福を実現することは多くの法律事務所と共通しています。他の事務所と異なっているのは「相手方を幸福にします」というところです。

 依頼者の求める利益は10だけれども,相手方に対しては20を要求して,結果として10を得るというように考える弁護士があります。

 しかし,私の事務所ではそのような考え方はとりません。

 

 私たちは,依頼者の正当な利益を正当に請求します。

 裏返せば相手方には正当な負担をしてもらうことであり,相手方に不当な損はさせません。

すなわち相手方の正当な利益を守ることになります。

 

3 相手方の納得

 納得できないことから紛争に発展しているのであり,示談交渉や訴訟手続は納得へのプロセスであるということを以前に書きました。

 このことは依頼者だけでなく相手方にも当てはまることです。私たちは,相手方にも納得してもらいたいと考えています。

 

 弁護士が作成する通知書や訴状,準備書面では,相手方にも納得してもらえるような内容に心がけます。また,主張すべき点は漏れなく主張しますが,相手方を不当に非難することは避けるようにしています。相手方にも敬意を払うことが必要です。

 

 誰も紛争を望んでいるわけではありません。何らかのボタンの掛け違い,思い違い,言い間違い,記憶違いがあったのです。ことさら相手の感情を逆なでするような表現は使わないようにします。

 

4 依頼者から見ると

 「相手方を幸福にします」と言われると依頼者はどう思うでしょうか。「相手は徹底的にやっつけてほしい」と表現する依頼者もありますが,可能であれば円満な解決がしたいというのが本音だと思います。

 また,相手方を幸福にするという意味を丁寧に説明すれば,ほとんどの人は納得してくれます。仮に,最初は納得されなくても,最後には納得してもらえるように,プロセスを重ねていきます。

 

5 相手方に手紙を送るとき

 通知書は可能な限り納得をしてもらえるような内容にしますが,相手に納得してもらうことは簡単ではありません。相手にとって,私は「敵側の弁護士」であり,何を言っても反発し,疑うと思います。

 そんなときは相手方が相談に行くであろう弁護士から説得してもらうのが一番です。弁護士からの内容証明郵便が届いた場合,ほとんどの場合弁護士を探して相談に行きます。その弁護士から相手方を説得してもらえるうに,相手の弁護士に対して説得の材料を提供する必要があります。

 

 内容証明郵便には,こちらの主張と,予想される相手の反論,それぞれの証拠,判例の考え方などを書きます。そうすると相手が相談した弁護士が事件の全体像を把握することができ,紛争を拡大発展させないよう,相手に対して,適切な解決方法を説得してくれます。

 

6 無用な紛争を防ぐ

 無用な紛争に発展しないことは,依頼者にとっても相手方にとっても大変幸せなことです。

依頼者と相手方の人間関係も過度に壊れることはありません。私たちはこのような解決を目指していきたいと考えています。

 

 弁護士から手紙が届くと,その弁護士がどんな考え方なのかをインターネットで調べる人が増えています。私の事務所のHPには,「相手方を幸福にします」と書いています。「このように考える弁護士であれば,争わずに和解したい」と言われて,速やかに解決することがあります。これも,依頼者と相手方にとって大変幸福なことです。