1 往診からの帰り道
私が尊敬する医師から,貴重な体験談を聞きました。
往診からの帰り,水田が広がる中を車で走っていたそうです。天気もよく,とても気持のよいドライブでした。「止まれ」の標識のある交差点に差しかかりましたが,見通しを遮るものはなく,左右を見ると,車も人もまったく来ていません。一旦停止をせずに走行してもまったく問題はないと思われましたが,その先生は停止線の手前で車を停めました。そのとき衝撃の事態が起きました。
目の前を大型ダンプが猛スピードで通り過ぎて行ったのです。一体どこから現れたのか,今まで存在しなかったダンプが,突然,目の前に現れたので大変驚いたそうです。もし一旦停止していなければ,大型ダンプと衝突して命を失っていたことは確実と思われました。
2 大型ダンプが見えなかった理由
その先生は,なぜダンプが見えなかったのかを分析したそうです。
ダンプカーが走ってきた道は何も視界を遮るものがないので,本来ならよく見えるはずでした。よく見ると,道路の反対側に住宅が並んでおり,ダンプカーと背景に見える家並みが完全に同化してしまい,認識できなかったということでした。
3 認知機能
私たちは自分の認知機能を確かなものであると信じています。しかし,この事例が示すように,どんな優秀な人であっても,錯覚や思い込みなどは避けられません。
見通しのよい交差点で交通事故が多発する理由も,ここにあります。
見る,聞く,嗅ぐ,味わう,触るなど,私たちは色々な方法で認知していますが,完全なものではなく,見間違い,聞き間違い,言い間違い,書き間違いなどは頻繁にあります。
だからこそ,世の中に様々なトラブルが生じて,それが拡大することによって裁判になったりするのです。
私自身,気をつけなければならないと思いました。
4 もう一つの教訓
この先生は,車も人も来ないのに交差点で一旦停止し,事故に遭わずに済みました。停まるかどうかはほんの一瞬の判断です。それが命を失うか否かを決めます。
一瞬の判断と言っても,偶然ではなく,その人の生き方が現れるものだと思います。人が見ていようと見ていまいと,ルールを守るかどうか,その人の生き方,あり方が自分の運命を決めると言えます。
日頃の生活態度が如何に大切か知らされます。
・一旦停止の標識があれば必ず止まる
・見通し悪い交差点は徐行する
・運転中はスマホに触らない
・走行する道路の制限速度に注意する
・車内に不要なものを置かない
・綺麗に洗車する
・必ず横断歩道を渡る
・赤信号は渡らない
・道路にゴミが落ちていたら拾って片付ける
・明るい挨拶を心懸ける
など沢山ありますね。
気をつけていきましょう。