1 AI
これからますますAIが社会に広がっていきます。
機械学習によってAIの判断力はどんどん進化し,これまで人間が判断していたことをAIが判断するようになっていきます。
2 気象予報
AIによる気象予報が話題になりました。
気象予報士は,気圧配置や気温,風向,風速などのデータから,集中豪雨などを予測します。
これに対してAIは,過去の雨雲の動きと集中豪雨等のデータから,何時間後にどこでどの程度の集中豪雨が発生するかを予測します。
こういう雨雲がこういう動きをしたら,ここでこういう天候が発生するという大量の過去のデータを機械学習するのです。
実際の例で,気象予報士よりも正確に予測できたことが分かっています。
3 ブラックボックス
「なぜ,AIはそのように判断したのか」という問いに,答えはありません。
「過去の大量のデータからそう判断した」と答えるしかありません。
これがAIの特筆すべき特徴です。
判断過程は完全にブラックボックスです。
4 昇進差別
これまで職場の昇進に関する男女差別が問題となってきました。
同じ能力,同じ成果を上げているのに,女性の昇進が遅れているとして訴訟になっています。
様々な事実関係や証拠に基づき人事担当者が女性を差別的に評価したと認定された例もあります。
5 AIによる人事
これからは,人事異動の判断もAIが行うようになります。
過去の大量のデータ(部署ごとの営業成績,労災発生件数と発生部署,中途退職者,休職者,各社員ごとの学歴・職歴・性別・家族関係・営業成果・メールの内容・ミスの内容・上司の評価・SNSへの投稿内容など)から,最良の人事政策(アルゴリズム)をAIが作り上げます。
そのアルゴリズムにしたがって,特定の社員に対して,この部署のこの役職に異動すると判断します。
結果は,明確に示されますが,そのように判断した理由は一切分かりません。
6 憲法14条
憲法14条は「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。」と定めています。
これは人間が差別の判断をすることを前提としています。
人間が差別的アルゴリズムを作るのであれば,憲法違反と言えますが,アルゴリズムはAIが作ります。
さらに,そのアルゴリズムはブラックボックスであって,差別であるか否かもまったく分かりません。
「AIが判断しました」という一言で憲法14条が消滅してしまうことになってしまう恐れがあります。
非常に難しく,しかし,重要な問題だと思います。
現在のところ,私に答えはありません。