1 体罰

 

体罰といっても,親が子に対して行う体罰,学校で教師が児童や生徒に対して行う体罰,

職場における体罰などがあります。

 

今回は,主に学校体罰について書きたいと思います。

 

2 学校教育法

 

学校教育法第11条は,「校長及び教員は,教育上必要があると認めるときは,文部科学大臣が定めるところにより, 児童,生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし,体罰を加えることはできない。」と定めており,体罰は禁止されています。

 

3 体罰とは

 

体罰というのは,「身体的な罰」であり,身体に苦痛を与えることによって,「二度と同じことはしまい」と身体に覚えさせようとするものです。

 

私が中学生の頃,教師による体罰は普通にあり,宿題を忘れると拳骨で頭をコツンと叩かれました。

 

これは「痛い思いをさせ,また,みんなの前で恥ずかしい思いをさせれば,二度と同じ過ちはしないようになるはずだ」という考え方に基づいて行われていたと思います。

 

話をして理解させる,納得させるというアプローチではなく,犬の調教と同じ発想で鞭を振るって躾けようとしていました。

 

「言っても分からないから,身体で覚えさせるんだ」という考え方です。

 

4 体罰の効果

 

このような体罰を受けた生徒はどうなるでしょうか。教師から「バカにされた」と感じ取りますから,指導を素直に受け取ることができません。

 

反抗することもありますし,表面的に従っていても,心では反発しています。

 

体罰は効果がないだけでなく,逆効果にもなってしまうのです。

 

5 学校体罰

 

時代は流れ,今の時代は「体罰」は学校からほぼ消滅しました。

 

しかし,教師も人間なので,生徒の不適切な言動にカッと腹が立って,思わず手が出てしまうことがあります。

 

このような暴行は偶発的なものですが,当然やってはなりません。

 

そのような偶発的な暴行についても,現場では「体罰」として扱われていますが,本来の「体罰」とは種類が異なります。

 

6 アンガーマネジメント

 

一瞬の怒りで暴力を振るってしまうことは,教師に限らず,誰にでもあることです。

 

これはアンガーマネジメントによって,怒りを抑える努力をしていくことが必要です。

 

7 体罰的な考え方

 

今日,生徒への指導として「体罰」を振るう教師はほぼなくなったと思われます。

 

しかし,「体罰的な考え方」は,学校以外の社会全般に広く残っています。

 

家庭内や職場において,「口で言っても分からないなら,痛い目に合わせて,身体で覚えさせる」という考え方が存在します。

 

これは学校体罰と同じように,効果がないどころが,悪影響を与えます。

 

相手がそのような過ちを犯したことには必ず理由があります。

 

まず,その理由をよく理解することから始まります。

 

常識的に通らない理由であっても,本人にとっては100%正しい理由なのです。

 

そのことを理解した上で,問題の解決に当たるようにしないと,反発と反抗しか生まれません。

 

4月16日のブログに書きましたが,まず最初に,自分の小さな「箱」から出ることが必要です。

 

(読んでおられない方は,是非ブログをお読みください)

 

問答無用で痛い目に合わせたりすると,激しい恨みの感情が残ってしまいます。

 

8 体罰には体罰を

 

「体罰をなくせ。そのために体罰教員には厳罰を与えよ」という主張があります。

 

「暴行をした教員を厳しく処置すれば,二度と体罰はしないだろう」あるいは「厳しく処罰して見せしめにする」という考え方です。

 

しかし,それこそが体罰的な考えではないでしょうか。

 

「体罰教員に痛い思いをさせれば,二度と体罰をしなくなる」という考えは自己矛盾だと思います。

 

教員も生徒も,親も子も,夫も妻も,上司も部下も,自分の小さな「箱」から出て,上から見下ろすのではなく,相手とまっすぐに向き合って話をすることが何より大切です。