1 債務整理
今回は,債務整理に関して書きたいと思います。
借金が膨らんでしまって返済に行き詰まった人が,弁護士のところへ債務整理の相談に来ます。
弁護士は,債務の内容,債務ができた理由,持っている資産(不動産,預貯金,保険,車),収入状況などを詳しく聞いて,自己破産,個人再生,任意整理などを選択して,手続を進めます。
2 借金の理由
借金の理由は様々です。知人の借金の保証人になった人,収入が減って住宅ローンが払えなくなったためカードローンやサラ金からの借入が膨らんでしまった人,飲み食いやパチンコ,競馬などで借金ができた人などです。
3 ギャンブル
ギャンブルなど生活態度に問題があって借金を作ってしまう人は少なくありません。
職場や家庭に居場所が感じられず,自己肯定感が低い人は,パチンコやスロットに行きがちです。
そして,パチンコやスロットは,繰り返し通わずにおれなくなります。詳しくは後日,依存症について書きたいと思いますが,見事にはまってしまう人がかなりあります。
4 免責
ギャンブルが原因で借金を作った場合,破産はできますが,免責が受けられない可能性があります。
賭博によって過大な債務を負担したことが免責不許可事由として法律で定められているからです。
免責が受けられないと破産しても借金がそのまま残ってしまうことになります。
5 「家計簿をつけなさい」
そんな場合,裁判官や弁護士は「家計簿をつけて,自分の収支を把握し,収入の範囲内で生活するようにしなさい」と指導します。
しかし,そんな人は家計簿などつけたことがありません。その人に限らず,家計簿をつけている人は少ないのです。
家計簿をつけている裁判官や弁護士はほとんどないと思います。
1ヶ月後に家計簿を提出するように言われますが,かなりの人が提出できません。
6 「どうしてつけないんですか!」
そんなときに「約束したでしょ。どうしてつけられないんですか。免責を受けられませんよ」と弁護士は叱責します。
もともときちんと書類を作るようなことは苦手なのです。
そもそも自己管理できる人であれば借金が膨らむこともありません。
叱責によって,その人はますます落ち込んでしまいます。
叱られて叱られて,やっと家計簿をつけたとしても,それが習慣になって続くことはありません。
弁護士に言われている間だけのことです。こんなことに何の意味があるでしょうか。
7 立ち直り
その人の自己肯定感を高め,ギャンブル以外に自己の価値を発見してもらって明るく伸びやかに生きていこうという気持を持ってもらうことが大切です。
叱責を繰り返すことは,意味がないどころか,逆効果です。
その人の価値を認めるところから始めることが必要だと思います。
8 パチンコをほめる?
その人のよいところを探しましょう。
どうしても見つからなければ,
「開店から閉店まで1日10時間以上も座ってパチンコを続けるなんて,すごい忍耐力,持続力ですね」
とほめることもあります。
「まだ家計簿つけてないんですか」とガミガミ言うよりも余程よいと思います。
借金の整理は簡単です。しかし,大切なことは本当にその人が立ち直ることです。
そのために私にできることは何か,これからも考えていきたいと思います。