自分の小さな「箱」から脱出する方法 アービンジャー・インスティチュート著 金森重樹監修,冨永星訳
1 箱に入っている
昨日に続いて,読書日記のようなものを書きたいと思います。
「箱」の中に入っているという状態を理解してもらうために、もう一つ例を紹介します。家族間のことであり,非常によくあるケースだと思います。
2 息子との関係
問題ばかり起こしている20代の息子がいます。父親は息子を無責任で厄介者だと思って,息子を厳しく躾けようとします。ところが,息子はそんな父親に反抗します。
この父親に対して,「あなたは息子に何を望みますか」と質問したら,「息子には責任感を持って,約束したことはきちんと守ってほしい」と答えます。
さて,どうでしょうか。
3 ある日のこと
ある日,息子が父親に「車を使わせてほしい」と言ってきたので,父親は「夜の10時までに帰ってくるのならいい」と,門限を決めて許しました。10時というのは普段の息子の行動パターンなら決して守れないような時刻です。
その日の晩,父親はいつも以上にイライラした気分で,妻とも息子の悪態について話をしていました。
時計は9時59分になり,「やはり約束を守らなかったな」と思ったとき,車のブレーキの音が聞こえ,玄関ドアを開けて,息子が「ほら約束守ったからね」と言って帰ってきました。
その息子に対して、父親は「今日は偉いじゃないか」と言ったでしょうか。違います。「何だギリギリじゃないか」と言いました。
約束を守ったことを認めることも褒めることもありませんでした。
これが箱の中に入っている姿です。
4 本当は息子に何を望んでいたのか
父親は息子に対して,本当に「約束を守ってほしい」と望んでいたのでしょうか。
正直な気持ちは,「約束を破ってほしい」というものです。
実際のところ,約束の時刻までに帰ってきたことに対して,「がっかりした」という気持ちがあります。
逆に時刻を過ぎて帰ってきたら「ほら,約束なんか守れないじゃないか」と気分がよくなるのです。
5 自分を正当化したい
これは恐ろしいこころですが,真実です。
なぜ,そうなるのでしょうか。
息子が約束を守らないことが,息子を厄介者と批判している自分を正当化するからです。
私たちは自分を正当化したいのです。
自分を正当化するためには,息子が約束を破ることが必要となり,息子に対して,約束を破ることを期待しているというのが父親の本音なのです。
この状態を箱に入っていると言います。
6 箱の中
箱に入っていると,相手を一人の人間としてまっすぐに見ていません。いつも見下しています。そのような状態では,相手との関係はいつまでも良くなりません。
悪化していくばかりです。
仮に相手に対して優しい言葉をかけたとしても,本心では「こうやって優しく言ってやらないとだめなやつだからな」と思っています。
ですから,相手は絶対に受け入れません。見抜いてしまいます。
逆に箱から出て,相手を自分と同じ人間であるとまっすぐに見ていれば,どんなに厳しいことを言っても,相手は受け入れます。
7 箱に入っているという自覚がない
このことは,親子,夫婦,上司と部下などあらゆる人間関係において共通するものです。
自分が箱に入っていると、相手も箱に入ります。そして,お互いに批判し合うようになります。
私たちはすぐに箱に入ってしまいます。そして,何よりも重大な問題はそのことを自覚していないという点です。
8 箱からでる
箱から出ると,今まで気づかなかった相手の良さが分かってきます。そして,相手の良さが伸びていきます。同時に,相手の欠点が小さくなっていきます。
弁護士や裁判官という人種は箱の中が好きです。すぐ箱の中に入って,人を批判します。そして,まったく自覚がありません。
気をつけたいと思います。