1 判決まで平均21ヶ月
裁判の平均審理期間は21ヶ月です。このうち争点整理に14ヶ月かかっています。争点整理とは,原告と被告の弁護士が準備書面を作成して,主張や反論を繰り返すものです。裁判全体の3分の2が争点整理に費やされているのです。
2 書面を作成する時間
争点整理では,弁護士が準備書面を作成して主張や反論を行います。準備書面を作成するために必要な期間を「1ヶ月」と答える弁護士がほとんどですが,実際に1ヶ月もかかるものではありません。一般的には1時間から3時間程度です。
3時間程度をひねり出すことは,裁判があった当日は無理だとしても,2,3日中には可能です。そして,依頼者に書面の内容を確認してもらって,提出するとしても1週間もあれば可能ではないでしょうか。1ヶ月はあまりにも長すぎます。
1ヶ月間という長い時間をもらってしまうと,一旦事件の記録をロッカーに仕舞い込み,自分の頭の中からも一度消去することとなります。その上で2週間程度経過してから,取りかかることになるのです。裁判官から指示された内容も記憶がハッキリしなくなってしまうこともあります。
これは極めて効率が悪いことであり,すぐに取りかかっていれば3時間で完成できたはずのものが,余計に時間がかかってしまうのです。
3 裁判が終わったらすぐに書く
裁判所で問題点を議論して,事務所に戻ったら,すぐに準備書面を書いてしまうのが最も効率的です。裁判所から帰る道中に,頭の中に大体の論理構成ができあがる場合が多いと思います。
後は,事務所でアウトプットするだけです。調査が必要な場合は,依頼者に確認の電話などはしますが,当日か翌日までに材料がそろうことが多いと思います。
私は3日を目標にしています。3日後であれば,裁判官の記憶も新しいので,提出した準備書面をすぐに読んでもらえると思います。
4 次の展開
3日以内に準備書面を提出できるようになってくると,次の展開が可能となります。それは,相手方が裁判期日の1週間前に書面を提出した後,3日以内にこちらの反論の書面を提出できるということです。
そうすると,裁判期日では,次の期日までに相手方が反論の書面を提出するということになります。
そして,相手方が次回期日の1週間前に提出した後,すぐにこちらが反論の書面を提出するということを繰り返していくと,争点整理の期間が半分で済んでしまうこととなります。
5 迅速な裁判を実現する弁護士の会
3日は無理でもせめて準備書面は2週間以内に提出するようにしましょうという趣旨で,5年前に「迅速な裁判を実現する弁護士の会」を立ち上げました。
現在は「迅速で円満な解決を目指す弁護士の会」に名称を変更しています。名称変更の経緯は別に書くこととしますが,迅速な裁判を目指す弁護士のグループができたのです。しかし,残念ながら,この運動はあまり広がっていません
多くの弁護士が2週間で準備書面を提出するようになれば,日本の裁判は非常に速くなります。
6 裁判所の努力
平成15年に「裁判の迅速化に関する法律」ができてから,裁判所も迅速化に力を入れており,第8回報告書まで公表されています。
しかし,争点整理手続の充実については議論されていますが,期日の間隔についての言及はありません。
7 期日の一括指定
期日と期日の間隔が開いてしまうもう一つの原因が,日程調整が上手くいかないことにあります。裁判所と原告側弁護士,被告側弁護士全員の日程を合わせる必要がありますが,なかなか調整できないために,後ろへずれ込んでしまいます。できれば,早い段階で,数回程度の期日を一括して指定してしまうことがよいと思います。
8 当事者の苦しみ
裁判は当事者にとって,非常に大きなストレスです。すこしでも速く紛争を解決し,ストレスから解放することが大切です。人生の貴重な時間を,長々と裁判に費やすようなことがあってはなりません。