1 裁判IT化
裁判所では民事裁判のIT化に向けた検討が進められています。①e提出(e-Filing),②e法廷 (e-Court),③e事件管理(e-Case Management)の実現(3つのe)と言われています。
2 e法廷
この中のe法廷がこの4月からいくつかの裁判所で始まっています。裁判所へ出かけることなく,インターネットを通じて裁判が進められますので,大変便利になりますし,裁判が速くすすむことが期待できます。
3 中途半端なIT化
e提出は,これまで紙で提出していた証拠書類などを,PDF等にデータ化してオンラインで提出するものです。
戸籍謄本や登記簿謄本などの証拠書類も紙ではなく,PDFにして提出することになるのですが,もともと,戸籍情報や登記情報は市役所や法務局にデジタルデータとして保存されています。それを弁護士が紙の形で取り寄せた上で,PDFにして裁判所にデータ提出するというのは,あまりにも滑稽なIT化と言わざるを得ません。
戸籍情報や登記情報を管理しているサーバーと裁判所とを接続すれば,はるかに優れたIT化となります。
今でも,一般の人が調停などの申立てをするために裁判所へ行き,受付で「戸籍謄本を持ってきてください」などと言われて出直すことがよくあります。こんな不便なことはありません。
裁判所と法務省,総務省が連携し,真に利用者のためになるIT化を実現してほしいと思います。
4 相続関係図
相続が関係する事件では,相続人を特定し,法定相続分を確定するために,大量の戸籍謄本を取り寄せて,一人一人の生年月日,死亡年月日の先後などを確認して,相続関係図というものを作り上げます。
できあがるまでに1ヶ月以上かかる場合や漏れがあり裁判所から指摘されてやり直すこともあります。
しかし,これらの戸籍情報はほとんどがデジタル化されています。技術的に,相続関係図の自動作成はできるはずです。時間もかかりませんし,正確です。
5 不動産の登記情報の活用
民事裁判に対する大きな不満の一つが,勝訴判決を得ても差押えできる財産を見つけることができずに差押えなどができないことです。これも法務局にデータが管理されています。所有者情報が利用できれば,判決に基づく差押えはもっと容易になりますし,利用者の満足も上がります。
IT化の方向性は正しいと思いますが,いまのところ中途半端なIT化であり,更なる進化を期待したいと思います。