その評価で合意が出来ないときには、裁判所の選任する不動産鑑定士の評価にゆだねることになります。
ところが、時々、不動産鑑定の評価が、実際の不動産の特性を加味していなくて、実勢価格と乖離していることもあります。たとえば、既存の擁壁を壊して整地しないと建物が建たなく買い手がつかないなど。
こうした事例で、遺産分割調停の無効を求めた裁判では、不動産の評価は遺産分割調停を成立させるという意思の動機部分に錯誤があって、それは周囲にも分かっていたとして、錯誤による意思表示として無効の主張が出来ると判断した裁判例があります。
もっとも、その裁判例は、その当事者は錯誤に陥っていたものの、路線価での評価しかしていなかったので、当事者に錯誤になるに落ち度があったとして、実際には無効主張を認めませんでした。
この裁判基準をこのコラムの事例に当てはめてみると、不動産鑑定までしていた当事者には落ち度はなく、錯誤無効を主張させても良さそうです。
かかる事案を見ていると、世の中には、信じる者は救われないということが本当にあるのだと、世の無常を感じざるを得ません。
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