早春の今、高校球児たちにとって青春全開の季節がやってきた。全国選抜高校野球選手権大会は、今年96回を迎え、創設100周年の阪神甲子園球場で18日から開催される。

 

 球場まで電車で約10分の所に住んでいたこともあり、高校野球は幼少時からずっと楽しみの一つでもあった。ことに高校生時代、放送委員会に所属したことでもあり、自校が練習試合に出るときには、球場のネット裏でアナウンサー気取りで実況放送をした事もあり、ぼくにとってもまさに青春の一ページだったのである。 

 

 全国高校野球選手権大会が始まっての今からちょうど100年前の1924年、朝日新聞社が連盟と主宰して夏の大会から始まっている。春は毎日新聞社が主催しているのである。 

 春と夏との色合いは違い、事に春の大会の開会式は様々な工夫が凝らされている。今年はどんなショーがあるのか楽しみだ。 

 

 32校が参加する今年も、地元市立西宮高校の女生徒が公明のプラカードをもって入場するのであろう。この学校では、先導役をする生徒を募集し、ほぼ同じ背丈に揃え、当日まで歩く練習を続けるのである。また当日の運営の表舞台は、生徒たちが受けもち、司会も生徒が担当する。いかにも若人の祭典に相応しい環境を整えている。 

 夏と違い、出場校の中には「21世紀枠」としても推薦された学校もある。地域に貢献したことや品位に長けた学校が選ばれるらしい。選ばれた高校は地元にとっても大きな誇りである。能登半島地震で被害に遭った輪島にある日本航空石川校は、練習場を失い、系列校のある山梨にまで出向いて練習したという。心から応援したい。

 

 高校野球ファンは偏りがない。勝っても負けても同じように選手を称える。4万人の大観衆が球場一体となるのは見ていても感動する。今年もどんな選手が活躍するのか、楽しみにしつつ、純粋に野球に打ち込みがらきらきら光る汗と涙に出会いたいものである。

 

 ただ一つ二つ気になることがある。

 一つは開会式には毎回文部科学大臣が出席し、祝辞を述べるのである。今回出席するかどうかは知らないが、大臣の行状で厳しく指摘された盛山氏だ。果たして純粋な青年たちの前で訓示する資格があるのかどうか。観衆はそれを許すのかどうか。本当は辞退すべきであろう。

 

 選手たちが甲子園に出場を目指すことは素晴らしいことだが、果たしてこれが教育の一環と捉えるべきか。教育の名を借りて暴力や暴言などをする指導者が存在するようだ。

 勝つために手段を択ばず、人格を無視するかのような扱いや根性論で気合を入れるなどが良い教育と言えるのだろうか、気になるところだ。 

 

 そして今年話題となった花巻東高の佐々木鱗太郎くんの進学が話題になっていた。プロも注目する超高校級の佐々木君は、アメリカ・スタンフォード大学に留学することを決めた。人生の選択を単線型にしたくないという。今までのように野球一筋に練習に明け暮れるよりも多様な選択肢を持つことに重きを置く生き方は、むしろ称賛してよいのかもしれない。こうして考えると、野球一筋もよいが、長い人生を考えた時、彼らの選択肢は多様であってもよいと考えなくもない。さて春の風を大いに楽しみにすることにしよう。

  

 

2024年3月10日記