17歳のジャズ、而して、スーパーカブ 第94話 | 小説:17歳のジャズ、而して、スーパーカブ

17歳のジャズ、而して、スーパーカブ 第94話

 閑話休題にしよう。


 めぐみの御伽噺、あるいはめぐみと僕との御伽噺、若しくはめぐみと僕らの御伽噺はだいぶ長くなりそうだからだ。


 残酷な結末の御伽噺。御伽噺は残酷なもの。


 でも、僕は修正したいと思う。僕がいま、子どもたちにしてるように修正したいと思ってる。めぐみの御伽噺を修正したい。


 僕は、あるがままにこうして書いてる。もちろん、僕から見たあるがままという意味だけど。他に方法がないんだ。僕には、他に方法がない。


 在るがまま。有るがまま。


 僕は、嘘は吐きたくない。そう思っていても、嘘は僕の影みたいに付き纏うけどさ。それでも、嘘は吐きたくないという気持ちが大切なんだ。なぜなら、書くという行為は、嘘そのもので、戒めが必要だからだ。


 現実。


 僕は、現実に起こったことを僕の目を通して書いてる。それは、厳密にいえば、現実なんかじゃない。


 御伽噺さ。


 この話は、僕の御伽噺さ。


 きっとそうさ。


 だからという訳じゃないけど、僕は、修正したい。いまは、めぐみを修正したい。大きなお世話を遥かに超えて、彼女の人生を転換させてしまうものだとしても、修正したい。ここで書くという行為によって修正するんじゃなくて、現実で、僕が動いて修正したい。


 神の見えざる手なんて糞喰らえだ。


 僕は、アダムを殺そう。僕は、ケインズになったつもりで動いてみよう。


 隆志。


 なあ、隆志、あの名前なんかない夏の一夜を現在まで繋いでくれて、感謝するよ。お前は、手紙でめぐみと僕をずっと繋いでくれていたんだね。それは、めぐみにとって残酷だったのかもしれない。まだわからないけどさ。


 まだ僕にはわからないけどさ。


 めぐみ、お前に逢いに行くよ。


 この薄ら莫迦どものつくってる社会にお前の名前なんてないんだろうけどさ、めぐみ、お前に僕は逢いに行くよ。


 僕は逢いに行くよ。


 みさ。


 そして、いまはまだ名前を出せない僕の息子。


 僕は、裏切るわけじゃないよ。


 そんなことはしないよ。


 みさも息子も、めぐみのことを、隆志から聴いていて、僕なんかよりもよほど知ってるんだろ?


 そうなんだろ、みさ、息子よ。


 僕は、大丈夫だ。


 涙溢れ、キーボードに零れ落ちて、何かが弾け飛んだんだ。


 その何かを確かめに、僕はめぐみに逢いに行くよ。


 さあ、今日は御伽噺はもうお仕舞いだ。また明日、つづきをでっち上げることにするよ。