台湾では去る18日夜から、中国と結んだ「サービス貿易協定」の撤回を求めて立法院(日本で言う国会)を学生デモが占拠し、警官隊と激しく衝突しているという映像がテレビでも伝えられたが、この協定を巡って混乱は長期化の様相を呈している。
彼らを突き動かしているものは、現在の台湾政権が非常に中国寄りになり、その結果、台湾・中国の新たな協定が結ばれ、それが実行されれば、ただでさえ強くなってきている中国の経済力、すなわち中国の企業がどっと台湾に流れ込み、台湾経済が中国の傘下に置かれるという事になる。現状に対する不満に加えて、こうした未来への不安から生まれる危機感であろう。
振り返ってみれば我が国もかつては安保闘争に象徴されるように、大国アメリカの影響力に対し危機感・不安感を持つ若者が立ち上がって国会にデモを繰り返した。日本もかつては若者が元気であった事が思い出される。しかし今日、デモをする事が良い悪いという事はさて置いて、若者が政治運動に暴れまわるという事がすっかりこの日本では影を潜めて静かな社会になっている。
けれども、4月1日からは消費税が上がって国民の生活は大変な事になっていくであろうし、また福島の原子炉は壊れたまま原発汚染がどんどん進んでいるという命の問題もある。かつての日本であれば、当然こうした問題に学生が立ち上がり、政治がそれに影響される事もあったと思われる中に、本当に日本の若者はこうしたエネルギーを失っているのかと疑問がわいてくる。
例えば、サッカーの試合等で、あるいは有名バンドを囲むコンサート会場の熱狂ぶりを見れば学生のエネルギーは決して失われているわけではなく、政治に無関心でいられるほど豊かな日本になったのだという事が言えないわけでもなかろう。
しかし、このまま若者の無関心さが続行するような状況に国の政治経済があるとは思えない。やがて彼らが動き出す事により、若者の力が日本の政治の流れを変えるきっかけになるという事も十分考えられるだろう。