ぺぺとタンポポ | いけず女優 こばやしあきこオフィシャルブログ

ぺぺとタンポポ





このGW中のヒトコマ。

蒲公英が、里親募集で宇治から私の元にやってきてくれたのは2011年の年明けのこと。既にその時二歳半を越えている、という話だったので、そろそろ人間で言う80歳。でも、とても元気だ。 ̄(=∵=) ̄

額にある稲妻のような形の白の毛がチャームポイント。


小さい頃も、2羽のうさぎをつがいで飼っていた。真っ白な毛に青い目のぺぺと赤い目のミミ。ミミは三度の出産で命を落としてしまった。出産はとてもストレスがかかるらしく、いずれもうまくいかなかった。でも残されたぺぺは、12年も生きてくれた。

ラビットフードなど無い時代。麦以外は、庭や祖母が持っていた寮の裏の原っぱの草を毎日摘んできてあげた。10歳近くなり年寄りになると、そう早く走らなくなったので、小学生の私でも連れ出せて、毎日だっこして一緒に原っぱへ卯散歩にでかけ、餌の草を積んでいた。彼は紫陽花の樹の下がお気に入りだった。

ある年の暮れ、中学の冬休み。第九を聴きにでかけ帰ってきた夜、雪起こしの風が吹いていて、母と早くぺぺの小屋に毛布をかけて寝かせてやらないと冷えるねと(ミミとぺぺは、外にネズミ返しをつけた父手製の高床式の小屋で飼っていた。今から思えばすごいものを作ってくれたものだ)話しながら、家につくなりぺぺの所に行くと、様子がおかしい。私が行くとよってきて、金網越しでもキスしてくれるのに、反応しない。恐る恐る抱き上げてみる。手足に力が入らない。頬っぺたにスリスリしても、目を開けてくれず、いつものようにキスしてくれない。でも、まだ温かかった。


信じたくなくて信じられなくて、ぺぺを抱いたまま、いつもの原っぱに泣きながら駆け出した。いつまでたっても家に入ってこない私を心配して探しに来た母は、事を察して私に声をかけられないでいたが、急に驚いたように言った「いや!!あっちゃんあれ見よし!!」

原っぱには、大きな大きな銀杏の樹が、シンボルのように4本並んで植わっている。その大きな4本の銀杏のてっぺんを、真っ白な雲が、うさぎの形をした雲が風にのって流れていったのだ。
だんだんと冷たくなってゆくぺぺを抱いたまま、その白いぺぺの雲が全く見えなくなるまで立ち尽くしていた。

一瞬のようで、とてもとても長い時間だった。

あまりに不思議な光景に、夢なのではないか、私にしか見えていないのではないかと半信半疑になった時「ぺぺちゃん、あんたにお別れしようて、待っててくれたんやね。」と母に声をかけられて、幻想ではなかったとまた涙が流れた。

あの風はやはり雪起こしの嵐だったらしく、翌朝は、青空のもと一面白銀の世界。庭も原っぱも、ぺぺの毛のように真っ白な、ふわふわとした雪に覆われていた。

父と母と、どこに目があるかわからないほど泣き腫らした私とで、まだ誰も歩いていない銀世界に一歩ずつ足跡をつけてゆく。その葬列は、紫陽花の木の下までつづいた。


あれから20年以上たち、また一人やもめの蒲公英が私のところ来てくれたのは、偶然ではない気がする。

蒲公英、いや太郎もつがいで飼われていて、二匹の子ウサギのパパでもあった。でも、飼い主が入院されるとやらで飼いきれなくなり、それぞれバラバラに里子に出されたのだ。子ウサギは、人気があるし、すぐに貰い手がつく。歳をとってからのウサギはなかなかなつかない。一番年上の太郎は人気がいまいちだった。でも、その青い瞳を見たら、「あ、この子や」と何かに背中を押されるように決めていた。最初、子ウサギをもらうつもりだったのと、里子でうさぎをもらうとなったときから、うさぎの好物だということと、踏まれてもアスファルトでも強く咲く「たんぽぽ」と名付けようと、前から決めてしまっていたので、井上 太郎 蒲公英とミドルネーム付きになった次第だ。

 

そんな蒲公英も、あといつまで一緒にいてくれるかわからない。これまで、東京、京都、博多と何度一緒に新幹線にのったことだろう。震災の時も、主人に「僕は日本に大災害がおきたら、君のそばにはいてあげられません。ウサギと二人で安全な場所にいてください。」と蒲公英は私を託され、ずっと私を和ませてくれていた。

超スーパーツンデレ。未だに抱っこも卯散歩も大嫌い、好物のお菓子をあげても奪い取るようにして隅っこにもってゆく。でも、「あ、つい癖で、、悪いね」とでも言わんばかりに、食べるのを一瞬やめて、振り向いてくれるその姿が、、愛おしい。そして、極々まれにキスしてくれる。

バタンと音を立てながら手足を広げて倒れる、うさぎ最大のリラックスポーズの音を聞きながら、今日も蒲公英のためのガーデニングに水をやる。主人も卯年生まれだからか、その寝っ転がる姿がそっくりだ。私は根っからのツンデレうさぎ好きらしいw。蒲公英、長生きしてね。これからもよろしく♪