1996/11/18リリース アルバム「BELOVED」

 

FM STATION 1996年12/20号 メンバーのセルフ・ライナーノーツ

GROOVY TOUR
アルバムの1曲目にはこれしかないと思った曲。 これまでのツアーで得た、ライブに対する思いがギッシリと詰まってる。/TERU

Lovers change fighters, cool
言葉遊びがてんこ盛りでナイターを見ながら作った。タイトルに意味はなく、ただ長くしたかった(笑) /TAKURO

BELOVED 
アルバムミックスで、よりバンドっぽい音になってる。アルバムをとおして聴くとまた違った印象で聴けるんじゃないかな?/JIRO

SHUTTER SPEEDSのテーマ
JIROの曲。メン バーがそれぞれ曲を書いて個性を出すっていう意味では、大成功の曲だと思う。 / HISASHI

Fairy Story
現実的なものとはまったく違う、空想の世界を描いている。 ライブでみんながどういう反応を示してくれるかがいちばん楽しみ。 / TERU 

カナリヤ 
「グロリアス」の主人公の7年後。あのとき10代の少年がいま20代中盤になり、家庭を持っている・・・北海道の友だちがモデル。/ TAKURO

HIT THE WORLD CHART
いまいちばん気持ちのいいリズムで、本当に自己満足のなかで作り上げた、ボクらが解析するところのファンクです。/JIRO

a Boy~ずっと忘れない~  
先行シングルになった曲。レコーディング中、メンバーの気持ちがいちばん合ったと感じる曲 / HISASHI

春を愛する人 
オレたちから見たアイスランドや、 訪れたときの思いが素直に出た。 その土地に住む人たちの温かさが伝わる曲 / TERU

カーテンコール 
19歳か20歳のときに作ったそのころ歌えなかった曲が、いま歌えることの意味を噛みしめながら演奏した。 / TAKURO

都忘れ 
ボクのなかではこの曲は、TAKUROくんの作る曲のなかで5本の指に入るくらい大好き。 1日でも早く発表したいと思ってた曲 / JIRO

RHAPSODY
BEAT out! reprise (ツアー追加公演)でやった曲。 ライブはこの曲で終わりだったけど、 アルバムは1番目に戻って聴いてほしい。/HISASHI

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「POP BEAT」 1996年12月号 P06
ほんとうの僕たちについて 

TAKURO 前回のようなギターポップのアルバムというのは自分の中にはなかったですね。 激しい曲は 「BEAT Out!」の中でたくさんやったし。 あったかいアルバムになればいいなとは思ってましたね。

--それはシングル「BELOVED」で示したやさしさやあたたかさを、アルバムにも引き継いでいるということですか?

TAKURO 
それはありました。
「BELOVED」によって、きっと次のアルバムは注目されるだろうし、へんに理想を掲げるよりも、素のままのサウンドの方がいいんじゃないかと思ったんですよね。

アルバム「BELOVED」が完成した今のTERU君の感想を聞かせてくれますか?

TERU オレはこのアルバムが出た後、また大きなツアーがあるというのが頭の中にあったので、 そのステージに立った時に、来て くれた人たちに対してどういう気持ちで歌うんだろうとか、歌入れの時は、そう思いながら歌ってた。それとあとは、BEAT Outツアーと、BEAT Out repriseツアーを終えてまた確認したことといいますか、やっぱりオレたちを一生懸命支えてくれてるまわりの人たちや、 あたたかい気持ちでオレたちを見てくれてる人たちに向けて、もっと自分なりの愛情表現ができたらなと思っていましたね。

JIRO君はどうですか? 
JIRO 
オレは前作よりも人のことを考えなくなったというか (笑)。自分たちのやりたいようにやったら、こうなったという。前作までは、まだ聴いてくださいという方が強かったと思うんです。
それよりもオレらが楽しんでいるのを観て、みんなも勝手に喜んでねという、ライヴに近いノリになってきたんじゃないかと思う。それに今回、やっとアルバムという視点で見れるようになったというか、前は1曲あったら1曲全部にパワーを注ぎ込んでたけど、今回は「SHUTTER SPEEDSのテーマ」みたいにラフな感じで作った曲もあったり、「BELOVED」のような大きな曲もあったり。そのへんのバランスがとれたアルバムが作れたんじゃないかと思う。

HISASHI君の感想は?
HISASHI
レコーディングの時は、ツアーが終わって、また次のツアーに向かっていくパワーをためてる時のGLAYの状態。写真を撮ったらそう写るだろうし、レコーディングにしても、そういう音になってるなと。それくらいの気持ちの注ぎ方が出来たと思っていますね。

「GROOVY TOUR」から。 これはツアーがテーマになってる 曲。実名(キーボードのDIE)も登場するし、メンバーの姿が見えてくるような曲ですね?

TAKURO アルバムを2枚作ってきて、よりリアルにリアルに という気持ちもあって、恋愛とか 夢や挫折を歌うのもいいんだけれど、実際自分たちは1年の3分の1近くツアーをまわってるという事実があるわけで。そういう自然なことを歌にしたかった。 この曲は、"BEAT out"のカンムリのついた2つのツアーのことなんですね。自分の中ですごく大きな存在だった「BEAT out !」というアルバムにケリをつけて、次の「BELOVED」からの世界観がこの曲から広がっていくという。1曲目はそういう曲に したかったんです。

HISASHI ツアーが歌詞のテーマに決まる前に、ギター録りをしたんですけど、なぜかライヴのことを考えて弾いてた記憶があるんですよ。

 TERU 次のツアーで、この曲は絶対に1曲目だと自分で決めつけたところがあったので、ステージに出る瞬間の緊張感とか、 うれしさといったものを、めいっぱい詰め込もうという気持ちはありましたね。音のリアルさじゃな くて、気持ちのリアルさと言いますか、そういうものを、この曲では出したいなとは思ってました。 

次の「Lovers change fighters,cool」については? 

TAKURO 出逢ってすぐの頃は、相手の何もかもが新鮮だけどある時期をがくると、その子がメシも食えば、トイレにも行くし笑 そうなった時に好きだけど腹の立つこともあるなという。 
でもその時期を乗り越えると2人の関係は さらに深まるんだろうけど。 おたがいの度量が試される(笑)、そんな時期の恋人たちに贈りたい曲。

 JIRO デモの段階から原曲の イメージがカチカチにあったんでそれをいかに崩すかが大変だった。 今までの流れだけじゃなくて、新 たなGLAYのシーンを作らなき やダメだと思ったから、この曲は 何度もアレンジし直した気がする。 インディーズの頃からやってたGLAYの流れがある96年型の曲

TERU 耳に入ってくるバックの音に変則的なメロディかついてるというところでは今までにないものだったので、歌入れはすごく苦労しました。 歌入れの時は、みんなには申し訳ないけと、バックの音を消して、キーボードの音だけを聴きながら歌ってました。 今だから告白しますけど(笑)。

そして大ヒットしたシングル 「BELOVED」について。

TAKURO この曲には思い出が詰まってますね。まず思い出すのがアイスランド。GLAYって、 ジャパニーズ・ポップロックみたいなイメージで、日本国内のみ有効なんじゃないかと自分では思っ てたけど、アイスランドでもハマ ってましたね。
移動中ずっとできたばかりの「BELOVED」 を聴いてたんですけど、あのイントロはもしかしたら自分の中では究極かもしれない。こねくりまわしてるうちに、偶然あの印象的なイントロのワンフレーズが出てきたことも思い出の一つです。

TERU 「グロリアス」では北海道を思い出すし、この曲ではアイスランドを思い出す。 
曲によっていろんな場所が思い出に残っていくのはうれしいですね。

JIRO それにしてもアイスランドは寒かった。だから夏に盛り上がった曲だとは思えない(笑)

次が 「SHUTTER SP EEDSのテーマ」これは武道館でも披露してくれたJIRO君が作曲した曲ですね?

 JIRO 曲自体は、頭の中で最初のイントロのリフが浮かんで。 で、ベースを持ったら、ちゃちゃっとできた(笑)。ほんとすぐにで きましたね、5分ぐらいかな。 「カナリヤ」もそうだけど、GLAY のことやTERUの歌声を考えないで、まず自分のやりたい曲を作ってみようと思ったんです。 それ がオレの曲の個性につながると思ったから。最初はTERUに全部うたってもらう予定だった。でも、自分の曲を初めて武道館で発表することになった時に、インパクトをつけたいなと思ったんですね。だ ったらオレが歌おうと。 

TERU 今聴き返してみると、 おっかねぇなぁ(笑)。 今回、GLAYの秘密兵器を1個出したとい うカンジかな。

 JIRO でも、まだまだいっぱいありますから大丈夫です(笑)。 

TAKURO 他の人の曲に詞を書くのは初めてだったんですよ。 この曲はGLAYの中でも異端児 だったので(笑)、歌詞も異端児に したいと思ってて。あえてカッコ つけずに、自分がキレる瞬間を待ってガーッと一気に詞にした。ツ アーの途中のホテルで書いた勢いが、詞の中にいきてると思う。日 本語のおもしろさを、今回は出したいと思ってたんだけど、それが顕著に出てる例かもしれない。

ライブでお客さんがどんなふうに感じてくれるかワクワクしてる。

「Falry Story」 についてはどうですか、HISASHI君?

 HISASHI アルバムには入 ってるけど、ライヴでは絶対にやらないし、シングルカットもされてない。でもいちばん好きだっていう曲が誰にでもあると思うんですね。この曲は僕にとってはそんな曲。例えば、1年前は "全曲100点、全曲シングルカットして もおかしくないくらいの気持ちで 作りました。"って言ってたけど、 その肩の力の入れ方が違う方向に向かった曲だと思う。 
アルバムを作るという意味を、あらためて気づかせてくれた曲でしたね。もしもライヴでやったら、お客さんからどういう答えが返ってくるんだろう?と思ってます。

TAKURO それは自分にもあるかもしれない。今までは100の曲ばかりで、すごく優等生だったけど、70点くらいで残りの30点はお客さんにゆだねてる。それを今僕らはワクワクしながら待ってるカンジかな。

---次のツアーでは必ずやってくれるってことですね?(笑)

TAKURO それは、どうでしょうねぇ(笑)

続いては「カナリヤ」。 この曲JIRO君の作曲ですよね? 

JIRO 後でちょっとメロディは変えたんですけど、これも原型は5分ぐらいでできた。家にあるクラシックギターを弾いてたら、いいのができてきたぞーって、歌いながら作った曲ですね。オレの中では、これこそが自分らしい曲だと思う。きっとみんなは「SHUTTER SPEEDS~」の方がオレらしいと思うかもしれないけどね。オレはずっとこうい曲を作りたかったんです。

TAKURO ここで歌ってるのは「グロリアス」の主人公と同じ、高校時代の同級生。GLAYのキャリアを通して、ある主人公の生きてく様を描いていきたいなと思ったんです。ほんとはすごく素敵なことなのに、みんな主人公は曲の中で完結してますよね。子供が生まれた時、「グロリアス」で描いた友達は、すごくうれしそうだった。でもその子が大きくなっていくにつれて男の空しさみたいなものとか、仕事へのやりきれなさを感じたり、そういうのもどんどん描いていくべきなんじゃないかなっておもってる。ある意味で、それが自分のライフワークなのかなという気もしてるから。

東京に出てきてからの 自分の経緯、それをすべてカタチにしたくて。

そして次が「HIT THE WORLD CHART!」これはヒットチャートにのぼった有名人の悲劇を歌ってる。 GLAY自身のことだったりして?(笑)

TAKURO GLAYは今、いろんなところに露出されて、自分たちの顔が知られてきている。
いわゆる有名になる怖さを感じ始めた頃に作ったので、どうなるんだろうなぁって。それがだんだん大きくなって、世界規模になっちいました(笑)

TERU 最近はどこを歩いてても、あっという顔では見られます。
でもそれを気にしてたら、やりたいこともできないですから。自分は自分だし、勝手にやらせてもらってます。 電車にも乗るし、あえてそういう自分でいたいと思う。

--レコーティングの時のエピードって何かありますか?

HISASHI 今までの中でいちばんバントのグルーヴを感じた曲。このAメロのところで(ドラムの)永井さんと目があって笑ったなとか(笑)
その時の雰囲気も一緒に録音した感じがする。

---「ニュー・シングルの a Boy~ずっと忘れない~」について
TERUのヴォーカルが、とてもやさしくて、あたたかい感じがしたんですけど、

TERUこの歌は、東京に出てきてからの自分の経緯と言いますか。それをすべて形にしておきたいなと思った。最後に何が残るか、何を大切にすれば今までのつらさが解消できるんだろうと思った時に、それは人に対するやさしさだったり、まわりから受ける愛情だ と思ったんですね。これは武道館をやる前、ツアーの合間にレコー ディングしたんですけど、 ツアーに来てくれた人たちのGLAYに対するやさしさをすごく感じていた時期だったので、その気持ちを自分なりに伝えようと思った。

---東京に出てきて、夢を叶えるためにたった独りで一生懸命がんばってた自分を今でも誇りに思うよ…というフレーズは、何度聴いても感動するなぁ。

TERU たった独りではどうにもならないこともあった。でもGLAYのメンバーがいたからこそがんばれたと思う。まわりの人たちにも世話になったしね。その人たちに対する気持ちは、この曲を大きなものにしてると思います。

TAKURO 生まれてくる時、死んでいく時、人は独り。だからこそ人とのつながりを求めてると 思う。 「グロリアス」で故郷の友達を想い、96年の最後に出すこのシングルで自分のことを想う。そして自分の中で次にどうやって生きていったらいいのか、徐々に見えだしてくる…そんなことを考え始めた時に、このが歌ができた。 アルバムの最後にできた曲です。

---そして次の曲が「春を愛する人」ですね?

HISASHI 原曲はかなりGLAYらしい曲だったんですけど、 そこに90年の今メンバーが持って いる構想をどんどん注ぎ込んでいった曲です。 TERUがどうして もやりたいと言ってた、一人オーケストラみたいなものをこういう曲でチャレンジできたのは、GLAYも成長したんだなと。前だったら、コードで押し切るような曲に仕上がっていると思う。 

TAKURO 今回はタイトルで悩んだ曲が多かった。この曲もそ うですね。「春を愛する人」は仮タイトルだったんだけど、やっぱりこれしかないなと(笑)。

 次は、バラッド曲の「カーテンコール」ですけど?

 TAKURO 20歳ぐらいに作っ た曲です。BELOVED という言葉を高校2年生の頃からいつかタイトルにしたいと思って、 今年やっと使えたように、このメ ロディも年齢的な部分でなかなか 歌えなくて。今回出すのがいちばんいいだろうということで。そういうのはGLAYには多いんです。 メロディはそのままだけど、詞は武道館あけに書いたので、生々しいですね(笑)。

TERU 20歳当時は、つらい詞がついてて。バンドとしてそういう時期もあったけど、今のオレた ちは変わったと。何を伝えるかと思った時、自分には歌があるという気持ちで歌ったんですけどね。

ラジオ局へ向かう車の中で、思わずTERUがうなった2曲とは?
--- 「都忘れ」については?

JIRO これは「グロリアス」と 同じ時期に録ってた曲。2曲がシ ングル候補になってて、結局「グ ロリアス」になった。オレは、個人的にはこの曲がすごく好きかな。 イントロのベースラインが楽器隊の中では、いちばん印象的な主線をとってる感じも好きです。

HISASHI 家でTAKUROと一緒に打ち込みをやったんだけど、その時のエネルギーみたいなものを思い出します。どうしてもギターのフレーズばかりに耳がいっちゃうことが多くて、そういう曲は自分の中でも好きな曲になるんですけど、こういうステージの上でTERUの歌を聴いてるような曲もあってもいいなと思った。 

TAKURO うまいことを言うね(笑)。「a Boy」とかこれとか、オレもそうだね。 TERUの歌を聴いちゃう。あとは、このタイトルを許してくれただけで、 バンドとしての器がデカいと思っ た(笑)。今回の中でいちばん気に入ってるタイトルかもしれない。 

---そして最後の曲が「RHAPSODY」。 この曲については?

 JIRO 究極の開き直りソングです(笑)。 この曲は、今のGLAYの活動を振り返ってみても、ラ ストにふさわしいなと。 次につながる前向きさ、ライヴにつながる前向きさみたいな。みんなこのアルバムを聴いてハッピーになってほしいんです。いい気分になってほしいんですよ(笑)。

HISASHI 僕らが高校時代に聴いてた、いちばん好きな8ビート。あえて今までのGLAYでは敬遠してたところがあったこの8ビートをやってる。やっぱり自分たちが気持ちよかったり、楽し くれるものは素直にやろうよ! という開き直りの曲です。

JIRO 「都忘れ」「RHAPSODY」の流れは、ぜひ車の中で聴いてほしいですね。 高速にでも乗ってれば、さらにバッチリ。 オレらがBAYFMに行く途中の高速で聴いてたら、この2曲でTERUがうなった(笑)。 

HISASHI 夕陽が出てれば、これまたサイコー!(笑)