龍子記念館にて企画展「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション  会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃」へ。
川端龍子が戦闘機を大画面に描いた『香炉峰』と会田誠『紐育空爆之図』(にゅうようくくうばくのず)、二つの戦争画を皮切りに、戦後の風景、春と秋、侍、そして祈りへ。



川端龍子『爆弾散華』
今回、一番心に響いた作品。
ぱっとこの作品を観た時は、金箔が舞っていて、植物が気持ち良さそうに泳いでいるかのようで、
華やかな美しい作品だなあと思った。
でもキャプションを読んでみると、印象はがらりと変わった。
この作品は、終戦からわずか2ヶ月後の展覧会で発表されたもの。
終戦直前の8月13日、龍子は空襲で自宅を失ったものの、奇跡的に被害が少なかったアトリエに泊まり込み、この作品を描き上げた。画面上に撒かれた金砂粉や、細かく裂かれた金箔は邸宅を大破させた爆弾の閃光をドラマチックに表現している。カボチャやナス、トマトといった自家菜園の野菜たちが、爆風によって吹き上げられ、物哀しく飛び散っていく光景が、戦争の悲劇を象徴している、と。

芸術家が悲劇を表現することの意味が、
その時の龍子の想いが、
絵のインパクトとともに胸に迫ってきて
しばらく立ち尽くしてしまった。




川端龍子『百子図』
1949年、上野動物園にインド首相から「インディラ」と名付けられた象が贈られた。これは象のいなくなった上野動物園に象がほしいと願う子供たちが行動し、周囲の大人たちを巻き込んで実現した出来事だった。龍子は象と遊ぶ子供たちのイメージを古くより子孫繁栄の象徴として描かれてきた「百子図」のモチーフとすることで、戦後復興と平和への願いを込めた。
子供たちが象の周りで嬉しそうに、楽しそうにしている様子が、なんとも微笑ましく、
この笑顔がずっと続きますようにと願わずにはいられない。



鴻池朋子『プリマヴェーラ』


川端龍子『草の実』


山口晃『五武人圖』


川端龍子『夢』


天明屋尚『ネオ千手観音』
千手観音が手にしているのは、ナイフやライフル。
信仰心や宗教が、平和を生むばかりではないことを突きつけられた。


十一面観音菩薩立像は、龍子が旧蔵していた仏像。

川端龍子と現代アートが共鳴し、激しく、儚くも美しい巨大なうねりに巻き込まれたような、圧巻の美術体験だった。

11月7日まで
大田区立龍子記念館にて開催中。