虎ノ門の閑静な高台にある、
菊池寛実記念 智美術館へ。

「非日常の雰囲気にまで昇華した環境で、
作品を鑑賞できる場にしたい」

美術館の設立者であり、現代陶芸のコレクターの菊池寛さんの、この想いから、壁面や調度の制作を諸作家に依頼しているそうです。

エントランスに足を踏み入れた途端、
お出迎えされるような、でもちょっと試されているような、篠田桃紅氏の「ある女主人の肖像」という作品で、見えない刀を置くような心持ちに。
茶室に入る前に、武士が刀を置いたような。

そして、地下一階へと降りていくこの螺旋階段…


※主催者の許可を得て撮影しています

写真では上っていますが。

降りていっていると想像してください。

ガラス作家・横山尚人氏による、ガラスの手摺りが光り輝いて、とても美しく、
その光の先に…


宇宙に浮かぶ惑星のように…


非日常の空間が広がるのです。

そんな中での今回の展覧会は、


「野蛮と洗練 加守田章二の陶芸」

タイトルにまで美意識がスパークしてる。
かっこよすぎ。

加守田章二は、信長と同じく49歳で亡くなった夭折の陶芸家で、独自の陶芸表現を次々に見出し、切り拓きました。







とても同じ作家とは思えません。
加守田は、岸和田で生まれ、京都で陶芸を学び、益子で独立し、そこで注目されると、岩手県の遠野へと移り、晩年の一時期は東京の東久留米で制作していたそう。
作陶期間は、わずか20年。
 称賛されようと、一つの場所に、方法に、留まることを知らない。
時々、「いい意味で、ファンの期待を裏切りたい」と言う言葉を聞きますが、こんなにも作風を変えていった加守田を、当時のファンはどのように受け止めていたのか?
インタビューしたいくらいです。

加守田の作品は、一見、無造作に見えても、それを作為的に作り込んでいることが多く。
その思考の深さにも惹きつけられてしまう。

太く短く濃密に生きた加守田章二。
野蛮なほど自分の作品を追求し、
同時に洗練され続けた。


後ろ髪引かれながら、螺旋階段を上る。
非日常から日常へ。

とてつもないエネルギーをもらった。


「野蛮と洗練 加守田章二の陶芸」
2019年7月21日まで
菊池寛実記念 智美術館