主人公の槐えんじゅは、母と二人で暮らしていたが、その母を事故でなくし、さらにコロナで仕事も失い、生きる力をなくしかけていた。そんな彼女を、叔母の伊予子さんが一緒に住まないかと誘ってくれた。川越で、染色工房をしている叔母。祖母は染織家で、賞を得るほどの名人で、有名だったが。三人姉妹の姉たちは、その仕事を嫌い家を出て、末っ子の叔母があとをついで、素人に染織をおしえていた。草木染めでつむぎ糸を染め、それを織って布にする。

それを手伝いながらも、近くの予備校に勤めた伊予子。そんなときに、さらに居候が増えた。エリートサラリーマンと結婚した長女多佳子の次男を預かることにしたと伊予子が言う。

大学四年生のいとこ、綸はビルから転落した女性の下敷きになり、入院。体は元気になったが、それがトラウマになったか、引きこもりになっていた。卒業して、一流企業に勤務することが一番だと思う両親にとって、もてあまし気味だった。

そして離れに住みはじめた綸は、子供の頃に祖母の仕事を見て、やってみて誉められたこともある。綸も新たに習いながらも、伊予子の工房を手伝い始める。

転落死した女性は有名な画家だった。

その画家のストーカーだった男が、綸に彼女の死ぬ間際の言葉を教えろと迫ってきたり、知らないといいながら、実は綸とは顔見知りだったのではないか、そんな疑いをいだいた槐は、一人旅に出た綸を追いかけ、祖母の出世作の地、諏訪湖まで一緒に行き、事実を知る。

才能はありながらも、本当に描きたいものがかけていないと悩んでいた女性画家。あれは事故か?自殺か?

鳥のようになにも考えずに、飛び立とうとしたのか?

彼女の好きな色に染めた藍染の糸を使い、帯を織ろうとする綸。結果は見えない幻のようなものたが、織ることでそこに向かうこと。それこそがこれからの綸の生きざま。

少し飛ばし読みしたが、まあ最後まで読んだから、読了にしておく。

草木染めとか、染織の話は、前にも読んだことあるが、ここではそれだけでなく、生きると言うことをテーマにしているようだ。なんのために生きるのか?生きるのに意味なんてあるのか?

真面目に考えたら、簡単にはわからない。しかし、それから目をそらしては生きられないものもいるんだな。

横関さんの新作、面白かった。

警察小説といえるかどうか。男女の立場が逆転した異世界。さらに、戦国武将の名前や立場をもつ刑事たち。

所轄から引き上げられ、警視庁に異動した徳川康子が配属されたのが、捜査一課第五係の織田信子警部が班長をつとめる。おおうつけと陰口を言われる織田は、潜入捜査も辞さず、強引な捜査で活躍している。

そんな織田班が取り組む事件で、次々と捕まるのは、なんとたの班長たち。次期一課長といわれていた第一班の今川は、かつての部下を警備会社に就職させ、会社の情報を得て、手柄をたててきたが、謝礼金の値上げをつきつけられ、なんと密かに殺してしまう。それを暴くきっかけをつけたのは新人の徳川刑事。

武田、上杉班長、さらには一課長自身の情報漏洩を暴き、追い落とした織田班長だが、最後には自らが、部下の明智に殺されてしまい、それを暴いたのが、木下。まるで戦国時代の展開のような捜査一課内の権力争い。

それでいて、それぞれの事件では、警察小説になっている。

さすがだね、やはり横関さんは面白い。

昨夜の雨は朝にはやみ、梅雨入りしたばかりだが、昼には晴れて暑くなる。


仕事帰りに、市立図書館分館へ。

五冊返却。うち三冊は読了したが、本格ミステリー二冊は読めないまま返す。延長しても読めそうにないので。

新たに四冊借りた。

今日借りた本


若竹七海

「パラダイス・ガーデンの喪失」

光文社、2021


五十嵐貴久

「炎の塔」

祥伝社、2015


有川ひろ

「物語の種」

幻冬舎、202305


赤川次郎

「余白の迷路」

角川書店、202312