大学生の吉乃は、母親に行ってみればといわれていた伯父が営む古本屋、深海に、夏休みに退屈紛れに行った。

それまでまともに口をきいたこともない伯父とは話もあまりできなかった。しかし、おすすめの本でもないかと聞いてみると、伯父は分厚いロシア人の小説を出してくれた。上下二冊で三千四百円。姪にも支払わせる伯父。

すぐには読まなかったものの、読み始めたら一気に最後まで。ソ連崩壊後に生きた母と娘、二人の人生を描いた小説。次々と資産家の男たちを渡り歩いて、玉の輿に乗る人生。

もっとこの作家のことが知りたくなったが、有名な作家でもなく、他の作品はすぐには見つからない。作家のことを話したいが、回りには読んだことあるものもなく、感想を話す機会もない。そんな吉乃に、伯父は読書会をすすめる。

伯父の古本屋の常連に呼び掛けて、店の一角ですることになる。社会人もいるし、店は深夜ゼロ時までだから、そのあとにすることになる。二時間ほど。

こうして始まった深海読書会。

メンバーは伯父と吉乃の他に、店のバイトに来ている国分藍。愛想がない女性。図書館司書の安井京子。吉乃と同じゼミにいる真島直哉。吉乃から話を聞いて、自分から店に連絡して参加した。ひそかに吉乃に好意をもつ。それと自営で広告などを請け負うグラフィックデザイナーの中澤卓生。

以上六人が土曜の深夜に集まり開く読書会。

そこで課題となった本は、最初は吉乃が気に入ったレプニコワ「真昼の子」。

二番目は真島が提案した絵本「いちばんやさしいけもの」。

三番目は京子の詩人大槻史子の詩集「隠花」。

四番目は中澤が提案した港草平の時代小説「雪、解けず」。

五番目はバイオリン独奏の楽譜。

実は音大出のバイオリニストだった国分が、三年間のご無沙汰から、店主に頼まれて、読書会で演奏する。有名な作曲家の未発表作品。「トランスルーセント」。

最後の課題は、店主の死後、残されていた製本された自伝「夜更けより静かな場所」。

読書会ごとに、その課題を提案した人物のことが描かれる。誰もが成功者じゃない、悩み苦しみ生きている。誰にも決断するときがある。それをして、生きていくのが人生。


なかなか読みがいがある作品だった。