年末の夜に読みはじめて、読了したのは日跨ぎして、元日になっていた。

救急車の運転士を勤める機関員生田が主人公の話。

若い頃はやんちゃでバイクを乗り回していた生田だが、今はまじめ。妻子がいて、救急隊員。前の職場では消防車の運転をしていたが、今の職場では救急車に。その運転にはかなり違いがあり、なれないと難しいものだが、彼は器用にこなしている。

その彼が救急出動を二回こなして、給油をしようと戻りかけたときに、道端に血を流して倒れた人物を発見し、救急車に収容し、病院も決まり、走り出そうとしたときに、患者がナイフを出して、救命救急士の森を人質にして、救急車をジャックする。そしてある救急病院に向かえと指示する。

その男は家族三人をある男に人質にされ、言われたままに犯行をしているという。手荷物には爆弾もあり、言うことを聞かないと、人質を殺したり、爆弾をリモコンで爆発させるのだと。

犯人の命じるままに、あちこちの病院に、時間限定で走り回される生田ら。犯人の目的は何か?

後半の救急車が走り回されるのに、生田が懸命な運転でこなしていくのが、なかなか見所。警察が近づくのは拒否しながらも、マスコミが取材車で近づくのを阻止させない犯人。犯人の指定通りの時間内につけるには、回りのマスコミの車が邪魔。遅れたら、人質を殺すと聞いて、なんとしても死者だけは出したくない生田。

息詰まる展開は読みごたえがあるし、生田の操車も見事。

ラストの生田の暴走もカッコいい。彼を支える仲間たちの応援もいいね。

救急車は万能ではない。そのために不幸にも家族をなくした人々が連帯して、社会に実態を知らしめるために起こした犯行だったようだ。