小説以外を最後まで読めたのは久しぶり。

ナラティブ、物語思考に関して論考した本。物語思考が生物が本来もつ能力のひとつだと位置付け、それにより、より良く生きることを実現するために、学び、訓練していこうと述べる。

神経科学を学ぶことからはじめ、その技術を使って、ナラティブ思考に取り組む学者のようだ。

生物の進化に寄与した創造的行動を可能にしたのは、脳内でのシナブスの進化であった。シナプスのネットワーク化により、創造を産み出すことができるようになり、それは、これがあれを引き起こすという一続きのナラティブという形で存在する。だから我々の意識のなかでは、創造性は物語思考として現れる。それによりヒトは新しい行動の連鎖を繰り返すことで、適応のための力となり、ヒトは新たな文化を生み出し、より良い生活を獲得してきた。

そんなナラティブを古代から現代に至る哲学との関係で描いている。現代の哲学の根幹にある論理と、ナラティブとばヒトの能力の両輪であり、どちらかに収斂させることはできない。

なかなか興味深い論考だった。