富岡製糸場ができた明治五年に、東京で大火が起きて、銀座辺りが焼きつくされた。その火は築地にあった日本で最初の西洋式ホテルにも飛び火して燃やした。
その焼け跡から火事以前に刺殺されたと思われる死体が見つかる。
主人公はイギリス人のカメラマン、ベアト。十九世紀の後半各地の戦争などを取材して有名になった。そのベアトは今は横浜で写真館をやりながら、取材もしている。そんな彼には英語を教えている生徒、東次郎が通っている。もとは旗本の子だったという彼をつれて、姉の小絵が頼みに来たのを断れなかった。商人に囲われていた彼女は、弟に一人立ちさせる手段として、英語を学ばせようとした。
ある日、東次郎が、築地ホテル炎上の新聞を見せたことがきっかけで、ベアトは取材にいくことに。
現地につくと、警察官になかにはいるのを止められてしまう。何かがあるのか?
そこに通りかけた司法省の高官米倉警視により、取引を申し込まれる。取材を許可する代わりに、取材内容をすべて報告し、さらに殺害犯の捜査もしてもらいたいと。こうして、ベアトは宿泊していた西洋人たちや従業員の日本人たちに聞き取り捜査を行い、容疑者を特定しようとするもうまくいかない。ヒントらしきものは聞いても、事件全体と結びつけない。
被害者のもとに訪れていた幕臣の妻女。その夫が、切腹して第一部は終わるが、第二部では新たな証言を得て、捜査は進展する。
第一部と第二部では時代背景が違う。
明治四年に、日本の不平等条約を改善すべく、政府の要人たちは岩倉卿を全権大使とする米欧巡遊使節として日本を離れていた。彼らが帰国するまで新たなことをするなと言われていたにも関わらず、薩摩や長州出の要人に頭を押さえられていた佐賀藩出のえとうしんぺいが司法卿として、新たな施策を行う。米倉は江藤の手下だった。
数年は帰国しないはずだった岩倉卿が、アメリカの手厚いもてなしにより、条約改正も早くなるかもと誤解して、急遽帰国したことで、江藤のもくろみは潰える。西郷隆盛らの征韓論が敗れ、彼らが政府から下野して、新たに内務卿となった大久保から粛清されようになる第二部。
小絵が米倉に呼び出され、徳川家にゆかりが深い増上寺に呼び出され、刺し違えて死ぬ。ベアト宛の遺書が残されていて、ホテルでの殺害犯が小絵だったとわかる。それによって、ベアトは事件の全貌を推理することができた。