隅田川で見つかった遺体。流れ着いたのは久松署の管内。久松署に勤務する刑事、芦原健剛は驚いた。遺体は親友の父親であり、幼い頃に父をなくした彼にとっては父親とも思える存在だった。
交番警官として浅草では親しまれた、もと警官。遺体確認に来た親友の濱仲亮輔は今さらながら、父親のことを知らなかったのを反省する。誰にも好かれた父がなぜ殺されたのか?恨みを買うような過去があったのか?
今は無職の彼は、暇な時間を利用して、父親の知り合いに会いに行き、父のことを聞き回る。しかし、定年後の父親しか知らないものばかりで、親友と呼べるのはなき健剛の父親くらいで、その死後、父親は寡黙になり、変わったと聞かされた。
その頃に何があったのか?健剛の父親の自殺はいまだに動機が不明。
亮輔は父の遺品のなかに、スクラップされた二件の事件を見つける。昭和天皇がなくなる以前、バブルの時代の事件。ひとつは都内の土地を売り、郊外に家をたてた若夫婦。金を手にしたことで遊ぶ夫。取り残された妻はノイローゼになり、育児放棄で乳児を死なせ、逮捕された。
もうひとつは天皇崩御後に起きた誘拐児健。バブルで潤った会社の社員二人の子が誘拐され、身代金を奪われた児健。一人の子は無事にも度されたが、もう一人は不幸なことにアレルギーでなくなり、遺体で戻った。国葬による警察の警備のため、誘拐児健にまともに取り組めなかった間隙をついた事件だった。いまだに犯人も身代金も見つからない。
そのスクラップをきっかけにして、推理を重ね、亮輔は父親らが関わった誘拐事件をあぶり出し、一味のメンバーが誰だったかも突き止める。
心ならずも誘拐した児童の一人を殺した罪の重さから自殺した健剛の父親、残された健剛を育てるために、また、警官が死んでは追求されるのを恐れて、生き長らえた亮輔の父親。今になって死に場所を見つけたかのように死んだ亮輔の父親。すべてを知った健剛と亮輔。
今さら白日のもとにさらすべきかどうか?
ひとまず袂を分かつことにした二人は、十年後に再会することを決める。