数年前に読んだことがある再読だったが、楽しく読めた。ミステリ風味のファンタジーかな。

サブタイトルが、ニーチェ女史の常識外事件簿。

主人公は日枝真樹子、出版社勤務でバツイチ。名字の音読みから、ニーチェというあだ名が。

故郷にすむ友人から連絡があり、真樹子の幽霊を見たという。気になり、暇を見つけて帰り、母校近くに行ってみると、確かにセーラー服姿の自分の後ろ姿が。そこに顔を出したのは、博物学者だという栖スミカ大智。全国にはいまだ解明されていない不思議があり、それを調べて回っているという。彼によれば、それは幽霊ではなく、スズラン似た花が、花粉を放出し作り出した映像だという。

こうして、出会った二人が常識では説明できない存在に出会う事件簿。

二作目は、離婚した夫の姉に昔聞かされた義姉の子供の頃の不思議体験。見知らぬ少女と知り合い

半日遊んだにもかかわらず、記憶にないことがあったという。回りから聞くと確からしいのに。昔から知られた存在で、人々に知られて追われるのが嫌で、遊んだもの記憶を一時的消すことができたのだという。

三番目の話は、不幸な生い立ちを持つ女性作家が失踪。知り合いだった美樹子は、その母に頼まれて行方を探すことに。作家のパソコンのネット履歴に、てんびんがみという検索語があり、ある村への経路も調べていた。一人旅立ち、過疎な村に着き、その村の神社で祭りがあると聞く。そこで出くわしたのが栖。一緒に神社に行き、作家を見つける。昔話にある神様は村人の依頼で、あるものを交換することで、村人の幸せを実現したという。では作家は何を交換したのか?

第四話は、真樹子の先輩が調べていた自殺事件。先輩までもが同じように自殺して、背後に何があるのかを調べ始めた真樹子は、栖に応援を頼む。彼がつれてきたのは一見ギャルだが、実は人間豹。真樹子の目の前で、彼女は変身して、その能力を見せつけた。栖によれば、山を放浪するさんかの民の同類で、ある村にすむ一族にはそうした変身能力があるのだと。

教育のことで息子を虐待していた父親に飛びかかる人間豹の活躍を描く第五話。

ラストは真樹子の友人の娘が夜目撃した紫陽花獣。祖母が半世紀前に、ダムに沈んだ故郷の村から持ち出した紫陽花。

時がたち、動く能力を得た紫陽花たちは満月の夜に一斉に村へ戻り、入水していく。見かねた真樹子や栖が一株だけを押さえ込み、根を張り植物に戻った紫陽花は、何もない場所にポツンと咲くことになる。