都心から電車で数時間の高原にやって来た三十代のフリーター、栗田拓海。パイトをいきなり首になり、焼けも手伝って、アパートを引き払い、自転車旅行でもして、次の仕事を探そうと、星空がきれいな高原にやってきた。あいにくついたのは夜で雨が降ってる。駅前は寂れて何もない。

見かけた明かりを目指してたどり着いたのが、ムーンライト。ペンションかと思いきや、今はシェアハウス。若い青年を見て、雨漏りする屋根の修理を頼もうと、八十代のオーナーの老人、中林虹之助が、泊めてくれた。

ここには八十代の老女かおるさん、五十代のもと介護士の塔子さん、看護師資格をもつ、フィリピン人の二十代のマリーが同居するシェアハウスだった。

屋根の修理などの後も居着いた拓海。ここに住むものは誰もが秘密を抱えていた。みんな何かから逃げ出してここにいた。夜逃げしたものを英語で、ムーンライト・フリットと呼ぶ。彼らはそれだった。

足を骨折して車椅子を使うかおるは、鬱気味で、夫と息子から認知症と誤解され、夫の死後、アメリカにすむ息子に施設に入れられそうになり、黙って知り合いの虹之助のところに来た。

介護の患者にセクハラをされ、突き飛ばして、殺したと思った塔子は、かおるのところにきて、一緒にムーンライトに。

介護士の資格を取るために頑張ってきたマリーは試験に落ち、ビザが着れかけていたが、虹之助の近くにすむ、認知はされていないが、実の父親である日本人に会いたいと思い、かおると塔子をのせた車の運転手役でついてきた。

塔子はここで、料理を担当。虹之助は野菜以外にも果物を育て、ジャム作りもするささやかな仕事をしていた。

屋根から落ち、足を骨折した拓海はしばらくマリーの世話になり、いつしか好き合うように。

塔子の殺人や海外で暮らす息子との関係、かおると息子の関係、マリーの父親との関係など、親子関係に悩む彼らに、それぞれの経緯があり、最後にはかおるは国内勤務となった息子のもとに帰り、塔子は殺人犯でないことがわかり、マリーはフィリピンに帰ることに。それぞれが一時の休息を終え、新たな未来に向けて旅立っていく。

悪くはない、なかなかよかった。