順調な人生を送ってきたつもりだった幾ツ谷、四十代の公認会計士。二十代の妻との結婚生活一年半、突然妻から離婚を切り出され驚く。人の気持ちを理解しようと思ったことがない彼は、喫茶店でコーヒーをかけられてもわからない。隣の席にいた同い年の男から、説明されてようやく気づく。

マンションは妻の親の名義だったため、彼が追い出され、ホテル住まいに。雨の公園で拾った猫と、流れ着いたのはシェアハウス、蔦屋敷。蔦が生い茂る洋館。その持ち主がなくなり、遠い親戚だった幾ツ谷も相続人として呼ばれたが。財産はすべて、同じく親戚で、シェアハウスに住む美大生の洋が継ぐことになり、彼がシェアハウスの管理人となる。猫好きな幾ツ谷は、捨てることもできず、空いていたシェアハウスの一室に住むことになる。隣室は喫茶店で彼を説教したメガネの男、大学で行動経済学を教える准教授、神鳴シズカ。しかも、八十台だった大伯母の配偶者だという。

母屋の日本家屋に大伯母は住み、シズカはシェアハウスの一室に住んでいた。二人のなれそめはラストになりようやくわかる。

シェアハウスには他に、特殊な掃除屋をしている男性カップルと、有名な作家だが原稿ができるまでは、部屋に引きこもり、夜中に奇声をあげる五十代の女性。誰もが一癖も二癖もある住人ばかり。

今さらながら、若い妻を諦めきれず、離婚に応じない幾ツ谷だったが、シェアハウスに住み、彼らと共に過ごすことで、少しづつ、自分に足りなかったもの、もはややり直しがきかないことだと理解していく。

不器用な心の交流がほほえましい、一つ屋根の下ストーリー。

続編も出ているらしい。