中断しかけたものの、結末を読んでから、前に帰り、どうにか読了。

松ノ内商会を経営する松ノ内家は豪邸にすむ。和風の外観だが、内装は洋風の館に、日本庭園と片隅にたつ蔵がある。

そんな松ノ内家にある日訪れた西島という青年。文豪楢崎野孫だと言う。祖父が七十年前、この館に居候していたという。作品と随筆で、その暮らしが明らかになっている楢崎。その一年間だけ、楢崎は作品を書いていない、と言われている。楢崎の生誕百周年にあたる今、その時期の楢崎の暮らしぶりが注目を集めている。それを知りたくて来たという。さらに、発表はされてない幻の原稿が屋敷のどこかに残されているかもしれないという。

遺稿が見つかれば大金になると聞き、彼を居候として受け入れた現当主の孝之。隠居した貞夫は、幼い頃に楢崎に会っているが、人には話したくない暗い思い出がある。家事をしている孝之の妻郁子と、娘の中学生琴美が同居している。

文豪の幻の原稿をめぐって、平穏だった松ノ内家に、ちょっとした波乱が起こる。

見つかった原稿と、その初稿原稿。その内容から、公にするかどうか、家族内でもめる。

楢崎の孫だと言っていた西島の正体。

はたして、幻の原稿はどうなるのか?