全国各地の農業に関わる女性たちを描いた短編集。

東京での激務に疲れはて、退職した沙帆は、高原野菜をつくる会社組織の群馬県昭和村の高樹農場に再就職して、生き返る。

喫茶店でバイトしていた大学生の真里亜は、親戚の幼なじみに再会して、それがきっかけで大叔父のなす畑に関わることに。岡山県備前市の伝統野菜の茄子。

北海道中部にある京極町の新美農場では、馬鈴薯とニンジンを育てている。跡を継いだ淳子は、知り合いに頼まれて、商社を退職した老人をバイトに雇うも、その態度に腹をたてたものの、実は…。

長崎県諫早市のいさはや農業大学校で寮生活をする葉月は、同じ新入生の女子に対して馴染めなかった。葉月が好きなのはアスパラガス。そんな葉月はあることがきっかけで、友人たちの真の姿や思いに気づく。

都会で職場結婚した夫が実家に帰り、レモン作りの果樹園で働くことになり、和歌山県の広川町に来た美優。取っつきにくかった舅とのわだかまりが溶ける様を描く。

夫の浮気が原因で離婚し、息子をつれて、実家の岩手県葛巻町の森牧場に帰った佐智子。跡継ぎの妹夫婦を助けて、牛の世話をする彼女の悩み。中学受験を控えた息子を引き取り、名門中学にいかせたいというもと夫と、その母親。子供のためにはどちらがいいか迷う佐智子に、息子は…。

ギリシアの島生まれの男性と知り合い、恋人になった光江。彼は故郷に妻がいるといって、帰国した。半世紀たって届いた彼の真実とは?彼に譲られた香川県の小豆島にある別荘で暮らす光江は、庭で育てるオリーブがお気に入りだった。

石川県小松市のトマト農家の夏実は、二十年あまりぶりに、幼なじみに会う。裏にあった転勤族のアパートに住んでいた同い年の隼人。彼は祖父の跡をついでレストランを開くのが夢で、夏実はトマト農家になることだった。そんな二人が再会できたのも、夏実の父がつくる特産トマトだった。

なかなかほのぼのとした作品ばかり、よかった。