東京新宿にある都立高校の夜間定時制。年代も境遇も様々な生徒が集う。

そんな学校の理科の教師として赴任した藤竹。大学の研究員でもある彼は、ここである実験をしようとした。

普段科学には無縁な生徒を集めて、何かの研究をする科学部という部活動をしようと。

そうして集められた部員たち。

ディスレクシア、読み書きに困難がある学習障害をもつ柳田。両親にも回りのものにも理解されず、落ち込み不良化した彼の能力に気づいた藤竹は、彼を部長にしようとスカウトする。

フィリピン人とのハーフで、若い頃は学校にも通えなかったアンジェらは、主人との店も成功し、再び勉学したいと定時制へ。

起立性調節障害で、過呼吸で保健室登校をしていた佳純。

子供の成長を見届けて、町工場を廃業した七十台の長嶺。若い頃にかかった肺病で入院する妻をもつ彼は、妻の薦めで定時制に。二人とも田舎から中卒で集団就職した世代だった。

昼間部に柳田と同じ席に座る丹羽は、机に残されたごみらしきものについて、柳田と連絡を取ったことが縁で知り合う。彼が使うコンピュータ室を実験のために使いたいという柳田にはじめは反発していたが、やがて互いに理解し合うようになる。

柳田ら部員が研究していたのは、火星を再現するというもの。火星と同じ重力を作るために、有り合わせのものを利用して、重力可変装置を作り、そのなかで、火星と同じようなクレーターがいかにしてできるかを研究した。

学会で発表されて、優秀賞を受けた上に、装置がJAXAの実験にも採用されることになる。

あとがきによれば、実話をもとにした話らしい。

最初は柳田の不良ぶりに、最後まで読めるかと危ぶんだが、彼の実験へののめり込みやたの部員たちの境遇に、ひかれて、一気に最後まで。

なかなか良かった。そんなに簡単に結果を出せるのか?成功できるのか?と、甘すぎる気もするが、また実話をもとにしたものだから、いいかな。