内田康彦が生んだ名探偵、浅見光彦と、柄刀が生んだ天才の探偵、天地龍之介が共演するミステリー第二作。

明治時代に幕臣から転身して、明治政府の高官として活躍した榎本武揚。その業績のわりに、現代ではあまり評価されない。それはなぜか?

明治時代に発見された隕石を手に入れた榎本は、そこに含まれる鉄を使って刀を作らせた。含有成分のゆえか、なかなか難航した刀作り。でもついに長短二つづつの四振りの刀が完成。うち一振りは皇室に献上された。また、短刀一振りは縁あって、北海道小樽にある龍宮神社に納められていて、その公開から話は始まる。

小樽の取材を頼まれた浅見と、観光に来ていた天地一行が、奇しくもこの神社で、公開日に出会う。

そして、ここで第一の殺人事件に遭遇する。中年女性が、毒殺される。万引きしたと思われる記念の流星刀を持っていた。のちに、ネット上で誹謗中傷することが好きな女だった。

ついで、海岸に放置された船の中に、頭を強打され死んだ男が発見される。そばに傘とか窓枠という不審物がある。

浅見と天地は別行動をとりながらも、携帯を介して連絡を取り、互いの推理を確かめあい、事件に挑む。

海岸で死んでいた男は探偵で、普段は怪しげな仕事をしていたらしいが、今回は流星刀の謎を求めて、北海道に来ていたらしい。

流星刀の刀鍛冶の岡吉国宗は、武蔵の刻国の助けを得て、無事に四振りの刀をこしらえたとある。しかし、なぜか、その協力者、刻国の事跡があまり残されていない。その一族は後に函館に移住して、刀鍛冶四条流を今に伝えているが、刻国のことは半ば秘密扱いされている。それは、なぜか?

犯人の小細工などで、石川啄木の詩の見立て殺人に見えたこともあったが、真の狙いは刻国の謎、秘密を公にしないことが目的だった。

二人の名探偵がいかにして、謎を解き明かすか?

正直言えば、事件も名探偵の推理もいまいちな気もするが、もはや続編が期待できない浅見探偵に会えるのはうれしいかな。