イギリスの児童文学と、そこに登場したお菓子のレシピ。それらが、必ずしも今の自分に満足していなかった人々を結びつけて、しあわせな未来を切り開く。
契約社員として働く三十路独身のつぐみは、自宅を兄夫婦がすめるように改造するため、部屋を片付けるように言われて実家に帰ってきた。本棚に見慣れない児童書「小公女」があり、作品中のお菓子のレシピが挟まれていたことに気づく。
誰がここに置いたのか?
その謎を調べ始めたつむぎ。彼女が発見したのはメアリーと呼ばれた老女だった。つぐみの実家の前には、ブリンのようなビジネスホテルがあり、彼女の家族が経営していた。祖父なきあと、祖母はメアリーと知り合ったことでホテルを続ける気持ちがわき、今は両親と兄夫婦の四人が後を継いだ。
お菓子作りが好きな祖母は、その素性がわからないメアリーさんと知り合い、仲良くなり、一緒に作ったり食べたりしていた。メアリーさんは近くの海岸で発見され、命は取り止めたが、一切の記憶をなくしていた。ピンクのワンピース、麦わら帽子と革製のキャリーバッグしかなかった。バッグの中には児童書が入っていた。ここ十年ほどはつぐみの両親のホテルに滞在していたらしい。なくなったときには、バッグの中にはいくらかの金しか残っていなかった。
児童書はどこへいったのか?
さらに、メアリーさんは海岸で拾ったミニ豚をつれて町を散歩してる姿を人々に目撃されていた。
どこまでいっていたのか?目的地はあったのか?
気になったつぐみはそれらを探してみることにした。さらに、見つけたレシピから、その持ち主と実際につくってみて、食べてみたりするようになる。
「小公女」には、奇跡のぶどうパン
「トムは真夜中の庭で」には、トライフル、最高のつまらないもの
「不思議の国のアリス」では、トリークルタルト
「ドリトル先生のアフリカゆき」には、スエット・プディング
「風にのってきたメアリー・ポピンズ」には、ジンジャー・パン
「秘密の花園」には、オーツケーキ
それらを経めぐって、つぐみが最後にたどり着いたのは、メアリーさんが作ろうとしていた秘密の花園だった。彼女を縁にして知り合った人々を招待し、レシピの菓子を各自がつくって、持ちより、ティーパーティを開く。これこそがメアリーさんが望んでいたものなのでは。