上橋さんの久方ぶりの新作。

著者が長年心に暖めてきたテーマ、植物に関する物語。動物と違い、動けない植物では、物語に出来ないと感じていたが、新たな研究などにより、刺激を受け、構想された物語。


植物たちにもコミュニケーションができる。それは化学変化による香りを媒介にして。様々な香りを出し、変化させることで、コミュニケーションをしている。

そんな植物たちの言葉、香りを聞く耳を持つのが、香君。

遠い昔、北の山岳地帯の中から現れたのが香君だった。異世界から。彼女が携えてきたオアレ稲。山の麓で植えられたそれは、どんな土地にでも成長し、人々の暮らしを助けていくようになる。

そして、小さな村はいつしか帝国となり、大陸の大部分を治めるようになる。戦争や武力ではなく、オアレ稲を独占することで、権力を得た帝国。

独自の肥料と種籾を確保することで、権力を握った。香君は神として、象徴化され、初代以外は、香りの言葉を知らないまま、承継されていた。

初代の香君が書き残した文書に残されたかつての大災厄の記録。飢えに苦しみ、地は枯れる。

そんな災厄が新たに起きた。

そんなときに、少女アイシャは現れた。初代同様に、香りの言葉を解せる少女。

災厄の兆しを感じた少数の人々がいた。アイシャは彼らに協力し、災厄を防ごうと奮闘するも、昔とは違い、小さな村とは違い、帝国は広く、様々な人間関係、権利関係が結び付いていて、一概には解決策が見つからない。しかし、傍観すれば、近い将来帝国は、傘下の多くの人々が苦しむことになる。

アイシャは新たな香訓になるとともに、解決策を提示し、実行させると共に、神ではない香君を自ら体現することで、人任せではなく、人々が自らの観察と努力で、将来の災厄を未然に防ぐことが出来る社会を作ろうとする。

オアレ稲も、それがやって来た異世界、アイシャの母親がやってきた異世界もいまだに未知のまま。でもこちらで知識を蓄えておけば、次なる災厄は防げるかもしれない。