都内の小さな公園で見つかった死体。殺人事件として、特別捜査本部が立ち上がる。警視庁捜査一課の刑事、音喜多の相棒になったのは所轄署の女刑事鳴海桜子だった。音大出で、音楽隊志望で警官になった桜子だが、なぜか所轄の課長に引き抜かれて、刑事をしている。顔を覚えるのが苦手そうな桜子に、本人の志望でもない刑事に抜擢されたのは、なぜか?不思議に思う音喜多。
被害者の遺留品にクラシックコンサートの半券があり、関係者を訪れることから始まった二人の捜査。まずは、被害者の身元を突き止めることだった。
ベートーベンのピアノ曲が縁で出会った小学生だった男女。二人で関わった父親殺し。再会後、シングルマザーになった彼女に寄り添うために画策する男。一緒になることを拒否されたものの、その後、理不尽にもひき逃げで殺された子供。犯人は父親が有名人であったことで不起訴になり、絶望して自殺した母親。永遠の恋人であった母親の意思を引き継ぎ、海外に逃亡したひき逃げ犯を殺そうとした男。
時を越えた愛情と狂気による殺人事件の真相に二人はたどり着けるのか?
警察小説でありながら、しっかり読まされる見事な作品。