主人公の遠山涼音は、桜山ホテルに新卒採用されてから七年、念願だったマーケティング部サービス課のアフタヌーンティーチームに配属された。ホームページに載っていたチームの先輩園田香織が産休をとることになり、その穴埋めとしてチームに加わった。

戦災孤児だった祖父が好きだった甘いもの、お菓子はごほうびだった。そんな祖父の影響で甘いものが好きだった涼音は、季節ごとにテーマを変えて開発されるアフタヌーンティーに魅了されていた。

目的に向かって努力することが苦ではない彼女は、回りに陰口を言われたりして、孤独感を感じることもあった。

新作のプレゼンを考えては提案してみても、なかなか採用されない。調理班の二人、定年退職後もシニアスタッフとして勤務するベテランシェフの須藤秀夫、三十代のチーフ飛鳥井達也。外資系ホテルから転職してきた彼は、イケメンで、かつて、フランスのコンテストにも出たことかあるパティシエ。その達也からにべもなく企画書を突っ返された涼音。

英語やフランス語での会話にも堪能な彼の秘密をやがて彼女は知る。ローマ字が認識できない識字障害だった。それを承知で外資系ホテルに雇われていたものの、それをネタに影でバカにされていることを知り、やめた過去がある。桜山ホテルではそれを隠したまま勤務しているが不都合はない。

そんな二人が日々の勤務の中で、自分の思いに向き合い、夢に向かって進むことを決意するまでの一年を描いた話。