恋人がなくなり、死のうとして、駅のホームにたたずんでいた赤塚美織。突然七十くらいの老紳士に声をかけられる。頼みたい仕事があると。報酬もちゃんとつくと聞かされる。うさんくさいとは思いながらも、話を聞いてみようと思ったのは、昔馴染みの喫茶店に誘われたからだった。

彼女は以前にも、婚約者に裏切られ死のうとしたことがある。そのときに声をかけられ、案内された喫茶店。そして二人の愛を育んだ、思いでの喫茶店。

聞かされた仕事は、毎日一編の短い物語を読み、感想をメモすること。週末にチェックして報酬を払うと。

一編八千字くらいの小説で、一文字十円、全十八話で百四十四万円の報酬。

毎週郵送されてくる小説が六日で六編。日曜にこの喫茶店で感想のメモを確認して報酬を払うと。

うさんくささを感じながらも、結局は引き受けた。名前だけでなく、住まいまで把握されているのにいちまつの不安を抱えながら。

紳士は代理人で依頼主については、最後に明かすが、今は答えられないと。

こうして送られて来るようになる小説が、以後掲載される。最後に簡単な彼女の感想がつけられて。

愛の物語とでもいえばいいか、様々な愛の形が取り上げられていき、次第に彼女は死に別れた恋人に会いたいと言う思いにさいなまれる。

最後の日、彼女は喫茶店には向かわず、駅のホームにたち、飛び込もうとするも、紳士に引き戻される。

そして渡された手紙。死んで会いに行きたいとまでおもう恋人からの手紙だった。

自分の死後、また自殺をしかねない恋人を救うために、考え出した方策がこの仕事だった。小説家志望だった彼は、恋人に様々な愛の形を小説で見せて、彼女にも別の愛を見つけてほしいと願った。

生き続けて、新しい愛を経験してほしいと願った。

そんな亡き恋人の思いを、残した金を受け取り、新たに生きることを決意する。