西日本のとある町、そこで額装師をしている夏樹。女一人で、額縁作りのための木材を加工し、塗装から仕上げまでを一人でこなす職人。額に入れる作品の補強や保存も手掛けるし、置く空間との相性も考えて、オーダーメイドの額縁を作る。

近くにはオフィスや商業地のビルも立ち並ぶが、一駅外れた古い建物がひしめく、そんな町並みにある。近くには民家と共にこじんまりしたカフェや雑貨店などがあり、さらに、夏樹が目当ての池畠のカレー店もある。その店主に会うために、夏樹はこの町で店を開いた。

口コミによる客へのオーダーメイドの額縁を作る夏樹の店は看板もなく、店というよりは工房のようなもの。

 くおん堂という有名な表具額縁店の所有するビルの一角にある夏樹の店。

ビルのオーナーの次男坊である純は、人懐こくて、年下だが、なぜか夏樹に好意をもち、客をつれてきてくれる。

中学の同級生だったというゆかりは、古くて今にも壊れそうな宿り木を持ってきて、額縁を依頼する。

あるいは、妻をなくし、妻の飼っていたセキセインコを逃がしてしまった老人は、その鳥の声に額縁をつくってほしいという。

あるいは、幼い頃に生き別れた妹の帽子だった毛糸の玉を持参して、それに額縁をつけてほしいという依頼。

中身の作品のことを知り尽くすまでは額縁の設計ができない夏樹は、依頼されたら、まずはその作品について、依頼主にとって、どんな意味があるものなのかを念入りに調べる。ある意味、依頼主の秘密をあばくことになる。

そんな夏樹の額縁作りの様子とともに、ここでは、過去のこだわりを抱える三人、夏樹と純と池畠の再生を描くもの語りだと言える。

夏樹は結婚の半年前に婚約者をバス事故でなくした。事故で死んだのは婚約者だけ。山中の事故で救助が来るまで数時間かかった。しかし、後に乗客の一人だけは、少し離れた食堂まで行っていたことがわかるが、その男は事故のことも救助が必要なこともなにも話さなかったという。もっと早く救助されていれば、もしかしたら死ななかったかもしれない。その男が池畠だった。責めるというよりは、当時のことが知りたかった夏樹。


純は中学時代に友人と川へ遊びに行き、川に落ち流された友人を助けようとして、一緒に流され、あわや死ぬところたった。近くにいた大学生の池畠に助けられて九死に一生を得た。しかし、そのときに体験した臨死体験から逃れられないことと、友人を死なせた呵責にとりつかれていた。以後、時々目が不自由になったりして、仕事も長続きせず、実家のお情けで暮らしていた。

池畠は、両親の離婚後母親と暮らしていたが、母親による無理心中で、車で水に落ちたものの、一人逃れて助かった過去があった。それかトラウマになり、事故の時には正常ではいられなかったのか。

芸大で油絵を描いていた純は、筆をおっていたが、実は自室の壁一面に、事故時の記憶を絵にしていた。その絵の額縁を夏樹に依頼。純の過去に踏み込んでいく夏樹。

子供の頃から近所のカレー店が好きだった池畠は、店がしまるとき、カレールーを入れるボットを記念にプレゼントされていて、ずっと大切にしていた。それを店に飾るための額縁を夏樹に依頼する。

夏樹は純と共に、池畠の過去を探るべく神戸に赴く。

それぞれの過去を知り、思いを知ることで、癒される、過去と離別できていく。そんな三人の再生の物語。