吉原裏同心シリーズ第36巻とある、本編シリーズのあと、吉原裏同心抄と、吉原裏同心抄の二つのシリーズが挟まったものの、結局は一つに繋げる意向のようだ。そして、他のシリーズ同様、前巻までを決定版として、新たに刊行されるようだ。


吉原の将来を見越して、京都の祇園に修行の旅に出た神守幹次郎と麻。

その留守を狙ったかのように吉原の乗っ取りをたくらむ一味の攻撃が激化し、ついには前巻では、会所頭取の四郎兵衛までもが殺害される。

一年の修行を待たずに帰らせることに躊躇する人々を差し置いて、幹次郎の親友である南町奉行所同心の桑平からの知らせを受け取った幹次郎は単身、江戸に向かう。

それから一月がたっても、馴染みの人々の前に顔を出さない幹次郎。

敵の首謀者はなんと将軍の近習で、老中との連絡係を勤める人物だった。前将軍時代から密かに吉原に通いつめ、その裏事情にも通じたものと繋がっていた。

密かに吉原に迫る危機について調べた幹次郎は、仲間の誰をも巻き添えにしないで、単身で一気に形をつける作戦を遂行する。

敵一味を一同に集めて、一気に剣により始末する。例え身分は高くでも、惨めな死に方をすれば、咎めだてられることなく、処理されると踏んだのか?

こうあっさり始末できるなら、四郎兵衛がなくなる前にしてもらいたかった、と思うのは軽率か?四郎兵衛の死により、敵も油断し、始末しやすかったのかもしれない。

誰にも会うことなく、京にとって返した幹次郎は麻と共に今日修行をつつけ、翌春には江戸に戻ることになる。

これからは江戸の吉原と京の祇園は手を結び、互いに交流して、将来に向かわなければならない。幹次郎は修行により、そう確信する。

吉原会所の八代目の頭取に就任し、あわせて京都祇園の旦那八人衆の一人にもなる、幹次郎が次の巻で語られるのだろう。

待ちに待った新刊だが、一気に読んでしまうとやはり、悲しいね。次はいつ出るのかと待ち遠しい。

佐伯通信の近刊お知らせによれば、次に幹次郎に会えるのは、春三月らしい。

その前には、来月十一月と来春二月に、酔いどれ小藤次の新刊が出るようだ。それも楽しみではある。私が読んでいる未完のシリーズは、この二つだから。