港町で戦後、三代続く老舗の洋食屋、キッチン風見鶏。じっくりと手間をかけて熟成させた肉料理がおすすめ。

ウェイターをしてる青年、坂田は漫画家を目指して頑張ってはいるが、いまだにデビューできない。彼には幽霊が見えて声を聞くこともできるという特別な能力を持っているものの、それが原因で、周囲から孤立し、孤独な人生を送ってきた。

三代目店主の鳥居絵里は、創業者の祖父に可愛がられ、父なきあと、跡を引き継ぎ、母と二人で店を守ってきた。料理の腕もあり、客のプロファイリングで、現在の客の状態に合わせた料理を提供することで、固定客をつかんできた。いまだに独身だが、子持ちのシングルファーザー手島に、心引かれている。交通事故死した妹夫婦の息子を養子とした手島だが、それを気にして、絵里に告白できないでいる。

坂田の前に現れた占い師をしてる寿々さん。同じ誕生日で、同い年の二人は、同じ能力を持つことに気づく。

未来に不安を抱え、人生の寂しさに負け、つい無理をして、心を病んでしまう。ただひとつの人生、だからこそ、心を偽らず、素直にいきたい。死ぬときに後悔のない人生を歩みたい。

そんな思いを描いたハートウォーミングな物語。やはり、森谷さんはいいよな。