東大出のキャリア警察官、小早川冬彦。正義感ではあるが、空気読めない男で、単独で突っ走るために、警察庁の上層部から煙たがれる存在。

所轄の杉並中央署生活安全課何でも相談室に配属された小早川の活躍するシリーズに引き続いて、今回からは、警視庁に異動。新たに作られた特命捜査対策室の第五係に配属。本来、第四係までしかないのに、新たに付け加えられた第五係は、資料倉庫の一室を急遽、部屋にした間に合わせの部署。何でも相談室。

係長は小早川警部より階級が下の警部補山花、どうやら警察庁幹部からの命令で、小早川の監視を命ぜられている。

人目がつかない仕事に埋没させるように言われている。おかげで、小早川は、県外への出張も自由にできることになる。

杉並中央署時代の相棒の従姉になる寅三巡査長のほかには、同僚だった余りさえない二人、樋村勇作、安智理沙子巡査も、なぜか異動してきている。

倉庫の整理を始めた矢先に飛び込んできた二つの事件の捜査に取りかかる。

ひとつは、テレビ番組の大食い大会の決勝で、優勝候補に毒物を投与してリタイアさせた疑い。一見、事件とも思えない事案だが、小早川は、勘に従い、捜査を始める。それに巻き込まれ、愚痴が絶えないメンバーたち。

二つ目は21年前に奈良、法隆寺の近くの人目につかない場所で発見された刺殺体の未解決事件。

被害者は出張と偽り、旅行を繰り返していたが、同伴者が見つからず、浮気とも断定できず、容疑者も浮かばず、お宮入りしていた。

ガンを患い、余命がない被害者の妻の心残りをなくすために、小早川は動き出す。通常は簡単には許されない出張も、係長に許され、現場の奈良に行ったり、被害者の過去を知る人物にあいに、長野へ飛んだりする。

他人の気持ちを逆撫でするような言葉を無邪気に口にしてしまう空気読めない人間小早川だが、さすがに頭はよく、最後には二件とも鮮やかに解き明かしてしまう。しかも、空気読めないはずの小早川は、加害者や関係者の気持ちを忖度する度量は持ち合わせたラストになるのが、小説とはいえ、読後感がいい。

新たなシリーズの始まりで、先か楽しみだ。