高校二年の美緒は、クラスメイトからつけられたあだ名がきっかけで、不登校になってしまう。都内の中学で英語教師をしている母親も、電機メーカーの研究職をしている父親も、最初は意見したものの、やがて自分の仕事をいいわけにして放任してしまう。
美緒が生まれたとき、初宮参りに、疎遠だった父方の祖父母が祝いに訪れ、プレゼントしてくれた赤いショール。祖父が営む染織工房で作られたものだった。
嫌なことがあると、美緒をそれを頭から被って、自分だけの世界にとじ込もる。時間が止まった世界にいられる魔法の布だった。そして、ネットで調べた祖父の工房やその付近の風景がまるで絵本の世界のようで、好きだった。
いつまでも美緒がそのショールにこだわるのは引きこもりから立ち直るには邪魔だと思った母親は、隠してしまう。それがきっかけで、美緒は衝動的に家出をして、向かったのは岩手県盛岡市にある祖父の工房だった。
手作業で羊毛から糸を紡ぎ、染色して織り上げる。祖父の作る布は、光を染め、風を織る布として、昭和の時代には大人気だったと、ネットにあった。
そんな有名な祖父の話を父親は一切せず、つれていってくれたこともなかった。
引きこもりだった美緒は祖父のもとで、その仕事の見習いとして働くことで、いきる意味や目標を見つけていく。
母親も担任クラスのいじめ問題が原因でネット上で非難され、苦しんでいた。父親も勤務先の会社の不振で、退職か転職か悩んでいた。問題を抱える両親は美緒にまともに向き合おうとしないで、美緒を追い込んでいた。
口下手で、思いを他人に、両親にさえ、うまく伝えられず、苦しんでいた美緒。
そんな美緒が祖父の仕事を通して、立ち直っていく様子を描いた作品だった。
なかなか興味深く、読み始めたら一気に読んでしまった。よかった。