明日処分する文庫本を40冊余り用意しているときに、出てきたこの文庫を読み始めたら、途中でやめられず、最後まで読まされてしまう。さすがに、樋口さんはうまい。

埼玉県北西部のいなか町でスナックを開くマスターと甥の若者。その近所で同じ月に2件ものバラバラ殺人事件が起こる。被害者は評判の歯科医とスナックで働いていたピアニストの女性。被害者の関係を調べてみるも、共通点は見いだせず、難航する捜査。定年間近の県警のベテラン平刑事坂森は、スナックに聞き込みに行き、驚く。マスターは警察学校の同期で、公安にしばらくいたあと退職した昔馴染み。
3人目の被害者がでるも捜査は進まなかったが、坂森は被害者の遺体にある共通点があることに気づく。右手でピースサインをしたような形で殺されている。そして、隣県の教師が思い出した昔話から、ある事件が浮かび上がる。20年前の御巣鷹山での飛行機の墜落事故。その時に、怒鳴りこんできた男がいたと言う証言。
事故現場を撮影するテレビ局のカメラに向かって、非常識にもピースサインを出して、写されることを喜ぶ子供たちが全国放送に流れた。もしかして、被害者はその時の子供ではないか?調べてみると確かにそうだった。しかも当時テレビ局をやめた男がいると言う。それが容疑者。しかも、スナックの常連客のカメラマン。最後に狙われるのは隣県の教師だと警察が張り込んでいたものの、一歩遅れて、教師を巻き添えにして容疑者はダイナマイトで自爆して、事件は終わる。被疑者死亡で終わってしまう。
県警に戻ることになった坂森だが、最後の挨拶にとスナックを訪れる。だが気になっていたことを話さずにいられない。
容疑者は死亡したが、どうも性格的に違和感を覚える。連続殺人事件の背後で糸を引くものがいる感じをぬぐえない。それが、公安部にいた優秀な刑事だったスナックのマスターではないかと、妄想に近い推理を話す。証拠も証言も得られず実証はできず、マスターも認める様子はないが。
20年前に偶然であった被害者たちが偶然にもスナック周辺に集まり、再会した。そして、容疑者の犯行をもたらした。すべてはマスターのマインドコントロールではなかったのか?

久しぶりに本格的なミステリーを読んだ気がする。